第241話 宴、終了

 よく達人と相対した時に、「まったく殺気が無い」という話をよく聞くが、まさかそれを現実の目の前で感じられるとは。

 本当に何も無い空間から声だけが出ているようで、私は恐怖を感じた。全身の神経が警戒の鐘を鳴らしていた。


「くくく……。私の気配を探ろうとは」

 私の動向がバレている!

 とっさにゼスが間に入って謝罪をする。

「もっ、申し訳ありません! この者、転化して日が浅き者。魔王さまの力をわかっておりませぬ。平にご容赦を!」

 その場にひざまづき頭を垂れる。

 私も慌ててそれに合わせる。

「くくく。良い、許す。今宵は楽しい時よ」

 どうやらお咎め無しなようだ。


 ホッとひと息取った後、魔王さまは席を立ち、その宴は解散となった。本当に顔を合わせるだけの会なのだな、と思った。

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