第240話 魔王の気配

 魔王さまが席につくと、その場の全員が起立し、お言葉を拝聴する。

「皆のもの、よく集まってくれた。感謝する。宴を催したゆえ、しばし楽しまれよ」

 低音で威厳のある声が響き、ここで謁見終了という運び。後はめいめい飲食をして歓談をする、という流れだ。


 ふと私は、その魔王さまの様子をチラ見して、どんなものなのか気配を探ってみた。


ぞっ!


 怖気おぞけがした。

 気配がまるで無いのだ。

 入ってきた時の衣擦れの音、声の出し方、そういったものはわかったものの、それ以外のというものがまったくわからないのだ。

 どこまで修行をすればこの境地に到達できるのか。私はそれを想像して、その場に立ち尽くしてしまった。


「ほう……」

 薄いカーテンの向こうで、ささやく魔王さまの声が漏れ聞こえた。

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