第238話 5回? 7回よ

 そのおばさんの右腕、ヒジから先が無くなっていた。

「ひっ……ひぃぃぃ!」

 豚が鳴くような声を出し、その場に崩れ落ちるおばさん。私はわざとらしくそのおばさんに寄り添う。

「大丈夫ですか? 立てますか?」

 どうやら、そのおばさんも控えていた召使いの人も、何が起こったのかわかっていないらしい。もちろんゼスは、何が起こったのかはわかっているようだ。だからこそあえて何も言わないのだ。

「お……覚えてらっしゃい!」

 召使いの人に助け起こされ、その場を後にするおばさん。

 一騎当千のクセ者共じゃなかったのか? あまりに腑抜けだぞ、あのおばさん。


 そのおばさんを見送ってから、ゼスは私の所に寄ってきた。

「リリカよ、すまぬなぁ。ああいう手合が多いからのぅ」

 そして私の耳に口を寄せて、ささやくように尋ねてくる。

「また腕を上げたの。あやつの右手を何回斬った? 5回までは見えたが?」

 その問いに短く答える。

「7回よ」

 ゼスは肩をすくめた。

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