第233話 魔大陸へ

 という事で、しばし廃城とはお別れだ。また帰ってくる予定ではあるが、何が起こるかわからないのが世の常というもの。ある程度は引き締めて行かないと。


「さて、この辺りで大丈夫じゃろう」

 ゼスは適当な影を見つけ、そこに視線を送る。おそらく、こちらの影と向こうの影を繋げているのだろう。少しの時間が経った後、「では行くぞ」と、私の手を握った。

 そしてゼスと私、一緒に影の中に飛び込む。スルリと水のような感触がして、次の時には別の所に出ていた。


「ここが……魔大陸……」

 今までいた騎士団のある王都よりも、格段に街並みが違っていた。

 整然と区画された土地に、どうやって作ったのかわからない白亜の建物。土でも石でもない、何かで舗装された頑丈な道。そこかしこにある灯りを灯す街灯。

 ここまで文明が進んでいる場所など、なかなか無い。これでは人間世界は太刀打ちできないだろう。

「さて、こっちじゃ」

 ゼスが先導する。どうやら、魔王さまのいる城に行くのに、少し歩くようだ。


 街並みを興味深そうにキョロキョロする私は、完全におのぼりさんだろう。

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