第232話 謁見準備

「面倒をかけるが、許してたもれ」

 ゼスはしおらしく頭を下げる。

「そんな。必要な事なんでしょ? そういう事はちゃんとしとかなきゃ」

 私が答えると、ゼスは申し訳ないような嬉しいような、そんな返事をする。


「では、頼んだぞな。愛しき姫騎士どの」

「承知 つかまつりました、姫様」

 お互いに歯の浮くようなやり取りをして、笑い合った。


 そんな訳で出立の準備だ。

 私は革鎧にショートソードを腰後ろに刺し、身を引き締める。

 一方のゼスは、どこかにしまってあったのだろう、ちゃんとした赤のドレスに身を包み、髪をまとめてアップにして、正装という出で立ちで出てくる。


「そう言えば、魔王さまのいる場所ってどこなの?」

「おお。言っておらんかったの。この大陸とは別の、通称『魔大陸』という所じゃ」

 魔大陸……。この大陸から出て、そちらに向かう事になる。


「ん? と言う事は、船とかで行かなきゃダメ?」

「そこは影に潜って渡れば良い。少し歩くがの」

 なるほど。そんな長旅になる訳ではなさそうだ。

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