第231話 魔王の召集令状

「魔王だなんて、そんな存在がいたんだ……」

 私が関心を示すと、ゼスは詳しく教えてくれた。

「まあの。魔の者たちを統べる存在じゃから、ワシも一応は配下というくくりになる。自分勝手にやっとるがの」

 組織としては、結構ゆるいのかも。

「で、たまにこうやって配下を集め、自分が上だと示して、規律を保たせる訳じゃ。あまり人間世界にチョッカイ出さぬようにな」

 ん? という事は、

「じゃあその魔王さまは、人間たちを滅ぼそうとか、そういう考えは持っていない訳なの?」

 私の問いに、うなずくゼス。

「むしろ友好的でありたいと考えているようじゃ。直接聞いた訳ではないが、軍を派遣するなど直接的な侵略はせん方針だそうじゃ」


 それはありがたい。今の人間世界では、とてもではないが対処しきれないだろう。


「まあ、此度の召集も、言わば“引き締め”のためのものじゃろう。面倒な事じゃがの」

 それは監督管理を行う立場にすれば、必要な事だろう。おそらく私でもそうする。部下には煙たがられるだろうが。


「じゃ、出席なのね?」

「リリカも行くんじゃぞ」

「え? 私も? 行って大丈夫なの?」

「特に新参者なら、顔を見せておかねば示しがつかぬからの。面倒じゃがついてきてくれりゃ」

 騎士団時代は、お偉い方々の前に出る事もあった。その延長線だろう。そう考えれば必要な事だ。

「わかったわ。同伴すればいい訳ね」

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