第230話 カラスの遣い

 さて、夜もベッドでくんずほぐれつしつつ、夜が明けようとしてた時、窓辺に一羽のカラスが留まった。

「カァ」

と一度鳴いて、自分の来訪を告げている様子だった。何かとそちらに目を向けると、カラスの足に何かが付けられている。

 カラスを一瞥するだに、ゼスは「はぁ」とため息を吐き、カラスの方に向かう。その足にくくり付けられたものを取り外すと、カラスは用は済んだとばかりにすぐに羽ばたいて行った。


「なんなの? あれ」

 私の疑問にゼスが渋面で答える。

「あれはの、“遣い”じゃ」

 それだけ言うと、カラスの足にあったものを広げた。それは小さな羊皮紙だった。


「何が書いてあるの?」

 理由もわからず聞いてみると、なかなか面倒くさそうに答えてくれる。

「まったく……。『集まれ』じゃと? あの御仁も気まぐれじゃのぅ」

 なんだかイヤな空気だ。

「『あの御仁』って?」

「ああ。リリカは知らなんだな。この紙はの、召集令状じゃ。差出人は、『魔王』じゃよ」


 おとぎ話にすら出てこない、それこそ黒幕のお出ましか。

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