第221話 厄介事

「うーん、まあ適当でいいか。ゼスは……こっちかな?」

 とりあえず言われてはいないが、ゼスの分の寝間着も買ってみる事に。彼女は、ベッドで休む時は裸なのだ。誰に見られる訳でもないから、と言ってはいるが、やはりなんだか妙な気になる事もある。

 ましてやあんな夜があったのだ。裸でベッドの上、というのも考えものだ。


「よし。これ下さい」

「あいよ。まいどあり」

 服屋の店主とやり取りをして代金を支払い、服屋を出る。一応私も騎士団時代の蓄えが少しあるので、ちょっとした買い物も大丈夫なのだ。


「で、次はカーテンか」

 ひとりごちて街をそぞろ歩くと、

「やめて下さい!」

と言う、悲鳴に近い叫びが聞こえてきた。まだ日は南中から少し傾いたくらいの時間。こんな真っ昼間から何が起こったのか?


 騒がしい所を見つけてなんとなく様子を伺うと、どうやら呑んだくれが店員の女性にチョッカイをかけているようなのだ。

「はー、やれやれ」

 私も世話焼きだな。その店員さんを助けようと人混みの中に分け入る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る