第214話 吸血鬼の睡眠事情

 さて、旧王都の廃城に戻ってきて、そろそろ寝るという所だが、一向に眠くなる気配が無い。

 ゼスの墓に寄り添っていた時からそうだったが、眠気などまったく無いのだ。一体どうしたのだろう。

「む? 寝る準備かえ? 吸血鬼に眠りは不要ぞな」

「え?」

 唐突にゼスに言われ、ちょっとポカンとしてしまった。眠りが必要ないとは?

 ゼスは続けてこう答える。

「吸血鬼は本来、睡眠は不要なのじゃ。昼間であろうと夜であろうと、人のように眠る事ができんのじゃ」

 なんだか想像してたのと違っていた。休みの日に二度寝してダラダラと過ごす、あの贅沢は味わえなくなるのか。ちょっと残念。


「ん? でもゼスは私と一緒に寝てたよね? あれはどうしてたの?」

 私の疑問には、かなり突飛な返答が返ってきた。

「ああ。あれは意識的に身体機能をシャットダウンさせておるのじゃ。強制的に眠ったようにして、時間になれば強制的に起きるよう、セッティングしておるのじゃよ」

 なんとも風情の無い寝方だ。

 だから朝早くとも、ゼスは目を覚まして買い出しに出られた訳か。


 納得である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る