第212話 恍惚の食事、終了
生肉を食べ、血を飲む。
端から見れば一種異様な光景ではあるものの、当人たちにとってみれば、とても必要な食事をしているのだ。むしろ人を襲わないだけでも良い、というもの。
血を舌の上で転がし、生肉を奥歯で噛みしめる。人の時には無かった、美味という悦楽に意識をたゆたわせ、私は恍惚の表情になっていた。
「だらしない表情じゃのぅ。じゃがまあ、その気持ちもわかる。ともかく食って飲め」
ゼスが勧めるままに、血がグラスに注がれ、私はそれをゆっくりと舌の上に流し、飲み込む。
脳髄からしびれるほどの快感を得て、とても満足な食事だった。人であった時の味覚とは、まったく違う味わいであった。
皿も瓶もカラになり、その日の食事は終了となった。
「これからの食事は、週に一度程度の頻度になるゆえ、今の味わいをよく噛み締めておけ。くれぐれも人は襲うなよ?」
ゼスにクギを刺され、吸血鬼の食事は終了。私たちは席を立った。
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