第208話 吸血鬼の食事情

「なんだか、ごめんなさい。無理に食事に付き合わせてしまって……」

 私がしょぼんとしていると、ゼスが頭をぽんぽんなでながら話してくれた。

「いやいや。リリカが気に病む事は無い。むしろ食事を共にする相手もいなかったんじゃ。感謝しこそすれ、嫌な気分などしとらんよ」

 口ではこうは言ってはいるものの、なんとなく私の気が収まらない。

「それよりも、リリカが吸血鬼の食事に慣れる事の方が大変ぞな。後で食事に行くじゃて、慣れてくれりゃ」

 そうなのだ。味のしない柑橘類を食べて、さて困った所なのだ。吸血鬼だから血を飲む所なのだろうが、はたして慣れるだろうか?

「では、片付けはそのへんにして、食事に行くとしようぞ」





「で、目的地はここな訳ね」

 食事をするのでどこに行くのか気になっていたが、何のことはない、以前にゼスに連れて行ってもらった、王都西区の料理屋だ。

「さて、騎士たちに見つかる前に、中に入ろうぞな。ちゃんと食えるものがあるからのぅ」

 そんな訳で、またここに厄介になるのだ。確かに肉料理は美味しかったが、今の吸血鬼の舌でどんな味がするか、ちょっと不安である。

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