第206話 剣聖の称号
さてそんな訳で私は吸血鬼となり、ゼスと共に旧王都の廃城に転がり込んで、雨風をしのぐ事になった訳だ。吸血鬼の身となっていても、やはり住まいは必要な訳だ。
そんなとりあえずの適当な生活が始まった時に、ゼスが紙を一枚、どこからか持ってきていた。
「人の情報とは、また早いものじゃよ。ほれ、早速リリカの件で何か書かれておったぞよ」
その手に持っていた紙は、新聞の号外だった。なぜまたそんなものを? ともかくそれを見てみると、私のイラストと共に、私に関する情報が書かれてあった。
「えーっと、「吸血鬼を討伐したリリカ・アーウェント出奔。所在は現在不明となっている」と。まあそうよね」
書いてある事は至極真っ当な事だ。さらに続きを読んでみる。
「「王は吸血鬼討伐の報奨として、リリカ・アーウェントに『剣聖』の称号を授与する予定であったが、急遽取り止め。現在捜索中である」か……。また『剣聖』なんて大仰な称号はいらないのに……」
私はため息まじりに感想を述べた。そんな称号などいらないのは、正直な所。
「ま、そんな情報など、しばらくすれば忘れられるわいの。人の噂も七十五日じゃ」
それはその通りだ。少しすれば、私の事など忘れていくだろう。
それよりも今は、廃城での生活を整える事が急務だ。いかに吸血鬼でも、生活の場はちゃんとしときたい。それは私の希望でもあった。
「さ、掃除しちゃいましょ。食事をする場所くらいは、綺麗にしとかないと」
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