第198話 肩パン続き

「私が! どういう思いで! ここにいると! 思ってるの!」

ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ

 私は思いっきりゼスの肩にパンチを連発する。そう、かなり思いっきりだ。腰から下がまだ地下に埋まっているゼスは避ける事もできず、ただただパンチを食らっていた。


「いたいいたい! ごめんじゃ。許してたもれ。ワシかて仕方なかったんじゃ。わかっておくれ」

 それでもパンチは続く。

 私は、枯れるほどの涙を流していたが、また涙が出てきていた。さっきまでは、かなしくて悔しくて。今度は、嬉しくてムカついて。


「もう……どうして……」

ぺちり

 叩く手に力が入らなくなる。本当にどういう言葉や行動をすればいいか、私にはまったくわからなくなっていた。頭の中はぐちゃぐちゃだ。

 手が止まった頃合いを見計らい、ようやくゼスは穴から抜け出し、座っている私の頭をなでてくれた。

「よくぞ頑張った。よくぞ耐えきった。それでこそ、ワシが認めた騎士さまよ」

 もう、あふれ出る涙を止める事はできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る