第196話 穴から出てきたのは

 地面に穴が空いた。

 下から掘った何かが、穴を開けたのだ。これはいよいよ危険な兆候が出てきた。

 私が身構えていると、その小さな穴から出てきたのは、


ニョキッ


 腕である。透けるような透明感のある肌艶の、指先まで整えてある、女性の肩から先の腕が出てきたのだ。

「は?」

 私は拍子抜けして、とりあえず成り行きを見ているしかできなかった。そんな状況になっていると、地面の下から声が聞こえてきた。


「ちょ、引っかかった。抜けん。あたたたた。な、何かつかむものが」

 何も無い虚空で何かをつかもうと、腕をブンブンとアチコチに振り回す。


「え? その声……。ゼス?」

「お? おお、リリカよ。そこにおるのか。ちょうど良い。引っ張ってくれりゃ」

 え? 地下で何をしてたの、ゼス? ともかく、出てきた腕をしっかりつかんで、ゆっくり優しく引っ張ろうとする。

 本当に何が起っているのだろう。拍子抜けだ。

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