第194話 また別の音

ズルズル ズチャッ


 確かに地面の下で、粘着質の何かが動いている音がする。警戒して聞き耳を立てていると、しばらくしてその音は止まった。


「……いったい何があるの……?」


 不穏な空気が流れている所だが、また無音に戻った地下墓地では、何かの気配はまったく無い。

 何か良からぬ事が起こるのか、ともかく警戒を怠らない。ああ、剣くらいは持ってくるべきだった。

 いざとなったら殴る蹴るなどの事はできるが、正直期待はできない。それは自分でもわかっている。素手素足は頼りない。


 そんな無音の時間が過ぎていった。

 私は膝立ちで地面の音に聞き耳を立てつつ、気配を探った。

 そんな時だった。


ゴリッ モゾモゾ


 今度は土を掘るような音が出てきた。やはりゼスが眠る地面の下からだ。いったい何が起こっているのか。まったくもってわからない。


「まったく……。なんなのよ……」

 言葉が漏れる。

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