第193話 異様な音

 そんな訳で日もとっぷりと暮れ、地下墓地のここには光すら入り込まない状況。真っ暗な中でただただ膝を抱えて座っている。私はあのゼスを斬った時の感触を思い出しながら、「どうにかならなかったのか?」と、疑問と後悔を繰り返し心に浮かべていた。


 そんな時だった。

 何かが動く音がした。

 それは名状しがたい音だった。


 何かを引きずるような、粘着質な物体が動く、そんな音が地下墓地にわずかに響いていた。

 その音は、私のいる場所の下、地面の中から聞こえてくる。


ズルズル ヌチャッ ズズズ


 私は一気に神経を尖らせた。

 何かが起こっているのは間違いない。しかしそれが何なのか、それはまったくわからない。


 地面の下?

 下にあるのはゼスの遺体。

 まさか……。


 ともかく、私は聞き耳を立てて警戒した。

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