第191話 泣いて乾いてまた泣いて

 ひとしきり泣いて、私はゼスの墓碑の隣に、膝を抱えて座った。

「ねえ、ゼス? あなた、何がしたかったの? これで満足? 私は後悔ばっかりだよ。ちょっと疲れた……」

 そうやって隣でつぶやくも、返答してくれる存在は無い。本来なら、「何をしとるんじゃ!」と、頭を叩かれてるはずなのに。そういう所は、しっかり想像できる。


 こうやって私の中で生きて行く。それがゼスの願い……だったのかな? そう思わざるを得なかった。

 涙で頬を濡らして、それが乾いて、また涙が流れる。それを何度繰り返しただろうか。そうやって、私の中のゼスは生きて行くのだろう。


「疲れたなぁ……。もうこのまま死んじゃおうかな……」

 いつの間にか日はとっぷりと暮れ、地下墓地のこの場所もかなり暗くなっていた。

 ほとんど飲まず食わずでここにいられるのだ。このまま餓死しても、文句は言われまい。

 今の私には、膝を抱えて座るくらいしか、できる事が無いのだから。

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