第190話 墓碑
「すまん、こんな事になって。ゼスの首と身体は、別々の棺桶に入れて封印処置をほどこし、離して埋めてある。その墓碑だけが唯一、王の情けで置かせてもらったものだ」
団長が解説を入れてくれる。
墓碑は、立方体に切り出された石で、私が抱えるくらいしかなかった。抱えて運べるくらいの小ささだった。
私は墓碑の前でへたり込むと、その墓碑をなでた。ゼスはこんな、変わり果てた姿になってしまったのだ。
「つもる話もあろう。ここの扉は開けておくから、いつでも見舞いに来るといい」
団長なりの、そして王なりの配慮だった。
私は、あれほどまでに泣いていたが、また墓碑を目の前にしてさらに涙があふれてきた。
こんな事のために剣を振っていた訳ではなかったはずなのに。
「うっ……く……ふっ……」
口からは嗚咽が漏れ出た。墓碑を見て、さらに自分がした事の実感が湧いてしまったのだ。
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