第188話 共同墓地

「団長……」

 私はそちらの方に顔を向け、返事をするのが精一杯だった。

「相当こたえているようだな。無理もない」

 団長も、沈痛な面持ちでそこに立っている。


 そして少しの空白の時間があった後、団長の方から切り出された。

「リリカ。ちょっと動けるか? 来て欲しい所がある」

 来て欲しい所? 別段私は、行く所も何も無い人間だ。そんな私を名指しして来て欲しいなど、酔狂な場所だろう。

「……わかりました」

 絞り出したような返事をして、立ち上がる。思っている以上に足腰がフラつく。まったく我ながら情けない。

 ゼスがこのていたらくを見たら、私の頭をひっぱたくだろうな。


 団長と共に向かったのは、西棟から少し離れた所の、市街地から外れた場所。亡くなった人たちが埋葬される『共同墓地』だ。

「もう少し歩く。ついてきてくれ」

 さらに共同墓地の中を進んで行くと、人ひとりが入れるお堂のような所にたどり着く。

「この中だ。入るぞ」

 鍵を開けて中に入り、下に下がる階段を下って行く。

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