第185話 勝者無き終了

 私の剣は確実にゼスの首に水平に突き刺さり、骨の隙間に入り込んで肉を切断していた。

 そのまま切っ先を、上に向ける。「ブチブチ」と皮の引きちぎられる音と共に、ゼスの首と胴は別れて行く。

 剣の切っ先にゼスの首を乗せたまま、私は高々と剣をかかげ、首級を上げる形となった。そのシーンは、吟遊詩人であっても形容しがたい風景だっただろう。


「お見事です」

 見届け役の騎士ふたりが駆け寄り、私にねぎらいの言葉をかけて頭を下げる。彼らに取っても内心は複雑な心境だっただろう。

 その言葉を聞いて、私は剣を離して落とし、ゼスの首を抱き抱えた。私の全身はゼスの血であけに染まっていた。

 ゼスの表情は、満足そうな眠っているような、とても穏やかな表情をしていた。

 かたや私は、汗と涙とゼスの血でぐちゃぐちゃだ。なんとも対照的なふたりの顔だったろう。どちらが勝者かわからない。


 私は力無くその場にへたり込んだ。そこから先の記憶が曖昧だ。とりあえず随伴の騎士ふたりに連れ出され、馬車に乗ったのだろう。ゼスの首を抱きしめながら身体が揺られていた。

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