第177話 根比べ

「ふぅー。さすがに無理があったか」

 狙いすましていた一撃を見越して、さらに次の手を持ってくるあたり、ゼスのしたたかさを感じる。おそらくまだまだ手の内は持っているだろう。

 かたや、ある程度の手の内はバレバレな私。次の動きも読めてしまうだろう。

 となると、内を『虚』にして初動を消して、待ちに徹するのもひとつの手だ。


 そうこうしている内に、やはり先程と同じように間合いの取り合いになり、ゼスも私も細かく動くようになっていた。


 戦闘のペースを取られていると感じた私は、一旦間合いを切って離れて、深呼吸をして改めて正眼に構える。ここからカウンター狙いで、突きを放っていく戦法だ。


 前後左右に出入りしつつ、近づいてくるゼス。一足一刀の間合いの前で、機会をうかがっている。これは長期戦になりそうかも。

 打たれたこめかみ辺りがジンジンと痛む。その痛みをごまかすために、さらに深呼吸をする。


 さあ、根比べだ。

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