第174話 間合いの取り合い

 私がさらに一歩踏み込んでの突きを放つと、ゼスはほんのわずかに引いて横に回り込み、ちょっとだけ前に出てから身体をクルッと一回転して、後ろ回し蹴りを放ってくる。

 当然私の突きのカウンターとして放つのだから、私も完全には避けきれず、甲冑の胴の部分にゼスの爪先がかする。


 今度は私が下がって距離を取る。蹴りがかすった胴には、真一文字に亀裂が入っていた。

 そう、お互いの一撃はこれで、必殺の一撃になったのだ。


 私もゼスも、こうなると間合いが詰められなくなってきていた。お互いに小刻み動くようになり、一瞬の交錯の機会を待つ事になる。


 せわしなく前後に出入りする私と、前後左右に運足をするゼス。

 間合いの取り合いが始まった。こうなってくると、『いかに自分に有利な間合いを取れるか』が、勝負の決め手となる。さてどうするか……。

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