第173話 喉の傷

「うおぉぉぉおぉぉ!!!」

 慌ててゼスはその突きを、のけぞりながらなんとかかわす。

 半歩下がって体制を整えるゼス。先程の突きによほど驚いたのか、冷や汗をかいている。

「ふ、ふふふ。さすがよの。初動がまったく見えなんだ」

 そこでと気付く。ゼスの喉に、一筋の傷ができていて、そこからわずかな血が流れていたのだ。


 以前に戦った時は、例え心臓を斬られようとも再生をしていた。その再生ができないのだ。

 これが聖剣の奇跡か。改めて構え直す。




 ―――――行ける。そう確信した。




 私は追撃として、袈裟斬り・逆袈裟と、二連撃を放つ。ゼスは距離を取ってバックステップでかわす。


 どうやらゼスも、この聖剣の効力に気がついているようだ。斬られれば、再生ができない事を。


 ふたりの距離が離れた所で、ゼスは初めて構えを取る。膝を深めに曲げて腰を落とし、手刀を前に出す。


 ここからが本番だ。

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