第171話 激戦、開幕

 新しく支給された甲冑に身を包み、腰には祈りが捧げられた聖剣。この出で立ちで吸血鬼に挑むのだから、吟遊詩人の唄にでも出てきそうなシチュエーションだ。


 旧王都の廃城の、正面入口より中に入る。時間はしばらくするとそろそろ日の入りという時間だ。前回は南中の昼間に入ったものだから、ゼスはいささか不満だったようだ。

 公正を期すため、このような時間を選択したのだ。そろそろゼスも起きているだろう。


 やはり前回と同じく、廃城に入っても罠もアンデッドもいない。ただただ玉座の前まで来いという、暗黙の挑発だ。


 さらに扉を開けて中に入る。正面には玉座。そしてそこに座るは、我らが宿敵の吸血鬼。足を組んで頬杖をついて、満足げに待っていた。

「ほお。わざわざこんな時間に来てくれるとは。おぬしもなかなかわかって来ておるのぅ」

「褒めても何も出ないわよ」


 私の言葉を聞いて、立ち上がるゼス。

「くっくっくっ。機は熟した。では始めようかのぅ。闘争という名の肉体言語を」


 一気に空気がピリッと張り詰めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る