第170話 監視

 そんな時に、騎士団団長はふたりの団員をよこしてくれた。名目上は監視の役割だ。


 どうやらこのふたりに、ゼスと別れてからの私の動向も監視されていたらしい。おおまかだが、私の心中も知っていてくれたようだ。

 もっと言ってしまえば、彼らはゼスの指南をしっかり受けて、かなり成長した有望株だ。

 そんな彼らふたりの監視下で、タイマンの決闘をするのだ。私も恥ずかしい真似はできない。無論、するつもりも無いが。


 行きの手段は、騎士団が用意した馬車に乗って行く事になった。そこまで荷物は多くないので、荷台も軽いようだ。


 騎士団団員ふたりの前で荷台に座る私。ゼスに習ってうまくできるようになった、瞑想で呼吸を整える。


吸って吐く

吸って吐く


 短くも楽しい時間を過ごさせてくれた相手を、これから斬るのだ。本来なら心中穏やかではいられないが、瞑想をする事で平静を保っていられる。

 おそらくゼスは、そこまで見越していたのだろう。


 さあ、そろそろ旧王都の廃城だ。

 一度大きく息を吸って、細く長く吐ききる。

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