第127話 実は貯蓄が……

 そんな所でゼスと買い物だ。

 先日買った塩漬け肉はあらかた食べ尽くし、私自身も肉が食べたかったので、今日は肉の買い出しだ。


「いつもは塩漬け肉じゃが、たまには生肉も買いたいのぅ」

 そんな事をボヤくゼス。保存や流通の問題で、生肉が扱えるのは生産地とその近辺くらいなものだ。いわば贅沢品と言えるだろう。

「さすがに懐具合に悪いわね。いっそ旅でもして、生産地を巡るくらいはしないと」

 とても現実的ではない提案をしてみると、ゼスが思いもよらぬ言葉を返してきた。

「ワシ、結構な貯蓄があるんじゃが」


 とても不審な言動に、私は眉をひそめる。

「ええー、吸血鬼が貯蓄? まさか盗んだりしてないでしょうね?」

 そんな言葉に反応したゼス。ちょっとむくれつつ返してくる。

「失敬な。錬金術をやっていた頃、いくつか貴重な資材を売った事があるんじゃ。それを元に研究をし、まとめた資料も売ったわい。もう権利は失効しとるがの」


 そういう事か。錬金術の権利費用は、現在でもバカにならない金額が入ると、誰かから聞いた事がある。それがあるなら、生活に不自由はしないだろう。


「……疑ってごめんなさい」

「まあ仕方ない。吸血鬼と金銭など、結びつかんでな」

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