第121話 これさえ無ければ……

 その返事をする間にも、テキパキとゼスは動いてくれた。

 私を寝巻きに着替えさせて布団をかぶせ、お湯をわかして湯たんぽに注いでタオルを巻き、私のお腹に当ててくれた。

「とりあえず何か食べられそうかの? 軽いものにしようか?」

「ごめん……無理……」

「それは仕方あるまいて。水は瓶に入れて置いておくでな。喉が渇いたらそれを飲め」

 とんでもなく優しい気遣いだ。普段にも増して甲斐甲斐しい。私は言葉に甘えるしか無かった。


 ふと、フラッとゼスが外に出ていった。何か目的でもあるのかと思ったが、そこまで考えている余裕は無かった。薬のおかげか、多少は痛みが落ち着いてきてはいるが、相変わらずだるさと痛みは続いている。


 つくづく女である事がイヤになる。“これ”さえ無ければ、もう少し練習もはかどるのに。

 そんな事も考えつつ、私は浅い眠りについた。

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