第120話 月のもの

 西棟に帰ってきて、とりあえず湯浴みをして身体をスッキリさせようと身体を拭いていた時に、その兆候が現れた。

 身体の中の内臓が鷲掴みされるような感覚を覚え、そしてにぶい痛みが徐々に出てきた。

 ああ。これはアレだ。“月のもの”だ。


 そう思ったのもつかの間、湯浴み場の床がドロッとした血でにぶい赤に変わってきてしまった。

 もうこうなってくると動けない。ここ最近、緊張して動いていたからな。その反動が出たのだろう。


 いやに静かに湯浴み場で座り込んでいる私に気づき、ゼスが覗き込んできた。

「あちゃ。調子が悪いのはこのためか。リリカ立てるか?」

「ごめん……」

 そう返すのがやっとだった。

 ゼスは私の身体を拭き、抱き上げてベッドに横たえ、脱脂綿をあてがってくれた。

「痛いんじゃろ? しばし待て。良い薬があるでの」

 と言って、小さな箱から小さな丸薬を出してきた。

「これを飲め。少しは痛みがまぎれるでな」

「ごめん……」

 そう返すのがやっとだった。

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