第10話『遊園地デート』
そんなこんなで迎えた週末の土曜日。彩芽に誘われた俺は待ち合わせ場所となる駅に来ていた。
集合時間は…今から30分前の午前9時だ。
「またかよ!」
前に放課後に遊ぼうと誘った時にも彩芽は遅刻してきた。今回は自分から誘って遅れるとは、1度キツく言った方がいいのか。
時計を見ながら1人駅のロータリーで待っていると、遠くからパタパタと走ってくる人影が見てた。
「せーんーぱーいー!」
「遅いぞ彩芽!遅れるんなら連絡の1つでも入れろっての!」
「ごめんなさいッス!ちょっと気合い入れてたら遅くなりました!」
彩芽の服装はヒラヒラしたスカートに紺色のパーカーと、本人の身長と相まって可愛らしく纏まっている。唇には薄らとリップが塗られており、化粧にも時間をかけていたことがうかがえた。
なるほど、時間をかけた甲斐はあったらしい。
「ったく…で、どこ行くんだ?」
「今日は遊園地に行くッス!私チケット買っときましたんで早く行きましょ!」
「あいよ」
そこからバスに乗り、遊園地へとまっすぐ向かう。
俺達がやってきたのは隣町のやや大きめな遊園地。一通りのアトラクションが揃っているだけではなく、ショーを行うための大規模なステージもある。
「しかし遊園地とはベタな所を選んだな」
「嫌でしたか?」
「いーや、少し意外だっただけだ」
「フッフッフッ…そうやって意外がっていれば良いッス!先輩は後で私の有能さを思い知ることになるッスからね!」
「その自信はどっから来るんだよ」
バスに揺られること約30分後。俺と彩芽は目的地である遊園地の入口に立っていた。
入場用のチケット売り場には長蛇の列ができており、入るには時間がかかりそうだ。
「また待つのか…先に昼飯でも行くか?」
「その必要は無いッス!なぜなら…じゃーん!彩芽ちゃんは事前に前売り券を買っておいたのでしたー!」
「おぉー!やるじゃんか。遅刻しなければ素直に褒め倒してたぜ」
「その説は本当に申し訳ないッス…」
彩芽が事前に買っておいてくれたチケットのおかけで、券売所には並ばなくて済んだ。人混みの横を通り抜け、遊園地の入口てチケットを係員に差し出す。
「特別ペアチケットですね。こちら特典をどうぞ!」
「特典?…ってこれは!?」
俺が入口で受け取ったのはチケットケース。だが特別なのはそのデザインだった。
何故なら──〈デルタマン〉が写っているのだ。
「彩芽!これはまさか…!」
「そうッス先輩…今日はなんとこの遊園地でデルタマンのショーがあるッス!そしてこのチケットはデルタマンとの記念撮影券にもなってるッス!」
「でかしたぞ彩芽!さすが俺の自慢の後輩だ!」
あまりの嬉しさに彩芽の頭をクシャクシャになるまで全力で撫でた。デルタマンと記念撮影だなんて、ファンなら誰もが夢見るシチュエーションだ!それを準備してくるなんて…最高だよお前!
「えへへ!もっと褒めてくれて良いッスよ!」
「有能!可愛い!愛してる!」
「な、なんか違くないッスか!?」
何はともあれ、これで今日は最高の1日であることが確定した。後は事前に話していたように遊園地を楽しむだけだ。
ショーが始まるのが午後3時から。まだまだ時間はタップリとある。
「行くぞ彩芽!この遊園地を遊び倒すんだ!」
「はいッス!」
今を楽しむため、俺達は最初のアトラクションとしてジェットコースターへと向かった。
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