第22話 体育祭(4)
『次は学年合同のチーム競技です。まずは男子の部。男子の皆さんは入場してください』
チーム競技は一つ一つ順番に、先にドッジボールなどから行われる。
『──続いて男子によるクラス対抗綱引きです。綱引きも他競技と同様にトーナメント方式となります』
「行くぞお前らー!」
「はまやんは参加しないだろ〜!」
『第一回戦、一年二組対三年五組です』
「──嘘だろおい! マジで一年勝っちまったよ!」
「ありゃ三年が可哀想だな……」
『第二回戦、一年四組対二年一組です』
「──隣のクラスも負けてんじゃねぇか!」
「今年の一年は桁違いだな……」
そしてやってくる俺たちの番。
『第三回戦、二年二組対三年六組です』
「頑張れお前らー!」
「見てろよ〜桜花〜!」
俺もテントに向かって手を振ってみる。すると夜宵さんが小さく振り返してくれた。
「それでは始めます。位置について……よーい……」
ピピーッというホイッスルが鳴り、俺たちは縄を拾い上げ全力で引く。
ビクともしないその縄を全力で引っ張ると摩擦で手が熱くなる。手の薄皮が剥けてヒリヒリと痛む。
「やれー! 頑張れー! 行けるぞお前らー!」
「うおぉぉぉぉ〜!!!」
「おぉぉぉぉ!!!」
「──そこまで!」
「はぁはぁはぁ……」
「ふぅ……」
『第三回戦の勝者は……二年二組です!』
「よっしゃぁぁ! よくやったぞーお前らー!!!」
「おぉ……はまやん、俺たち以上に喜んでんな〜……はぁ……」
「はは……」
一勝できた。全敗だった俺たちが、本番で一勝できた。それは十分満足のいく結果だった。
しかしこれは熱血スポコン漫画ではない。奇跡の大優勝なんて甘い結果はなかった。
『──よって優勝は一年二組です! 一年二組の皆さん、おめでとうございます! ……以上を持ちまして、男子クラス対抗大綱引きを終わります』
「残念だったなー。だが、あれは一年が強すぎた。本当に悲しいのは全クラス初戦敗退の三年だー。お前ら悲しむことないからなー」
「やめてくれよはまやん! 逆にもっと悲しくなるわ〜!」
「はぁ全く本当に情けないわね!」
「痛い痛い! 勝ったってところを評価してくれよ〜!」
テントに戻ると健人は桜花に首根っこを掴まれていた。
「岬くん……お疲れ様……」
「ありがとう夜宵さん」
「そんじゃー次は女子行くぞー! 玉入れ頑張れよー!」
はまやんは盛り上がる競技かどうかなんて関係なく暑苦しかった。
『続いてチーム競技、女子の部。まずは玉入れです』
「じゃあ次は夜宵さん頑張ってね」
「ん……行ってきます……!」
玉入れは場所を使わないので全部のクラスが一斉にやるようだ。
「それでは位置について……よーい……」
ホイッスルと共に女子たちは一斉に玉を籠に向かって投げ始める。
小柄な夜宵さんはあんまり届いていなかったが、それでも一生懸命に玉を投げていた。桜花もとんでもない大振りなフォームだが意外と入っているようだ。
声までは聞こえないがはまやんも全力で応援している。
「そこまで! それでは数えます。いーち……に……」
『──よって優勝は二年二組です! 二年二組の皆さんおめでとうございます! ……続いて──』
「ふん! どんなもんよ!」
戻ってきた桜花は腕を組んでふんぞり返っている。
「やるな〜! これで二年は今のところ二組が一位じゃないか〜?」
「男子のせいで二位ぐらいよ。個人競技の点は分からないけどね」
「夜宵さんお疲れ様」
「うん……疲れた……」
うなじに汗を浮かべ大きな水筒から水を飲む彼女の横顔は、どこか刺激的だった。
「よーしこれから昼休憩だ! しっかり休んで午後のリレーに備えるぞー!」
「──夜宵さん、今日も別の場所で食べるの?」
「ん……そのつもりだった……」
一人の方が落ち着くからと、いつも彼女はわざわざ空き教室に移動して食べているらしい。しかしこんな時ぐらいは一緒に食べたいものだ。
「食べましょ夜宵ちゃん。オードブル持ってきてるの」
「やるな〜桜花! 流石金持ちだ」
去年も桜花はオードブルを持ってきていた。俺と健人はそれを貰える前提で今日は何も持ってきていない。
というのも、去年は事前に何も言わずに俺たちに食べさせる分まで持ってきたので腹がパンパンでリレーで吐きそうになった思い出があるのだ。
「いやでも……」
「沢山動いたけど、そのコンビニのおにぎり一つで大丈夫?」
「……ん、じゃあ一緒に頂く……」
「うん!」
「今年は賑やかでいいな〜! そんじゃ、いただきま〜す!」
「ふん! せいぜいしっかり食べてリレーは頑張るのね!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あとがき
お読み頂きありがとうございます!
次話2023/12/17 18:00更新予定!今日この後6時です!
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