3-3 リオの本心
この言葉に、一瞬驚きの表情を浮かべるフラムさん。
だけど、すぐに気まずそうに横を向かれてしまう。
「……なにそれ……意味わかんない」
まぁ、そういう反応になるよね。
「ほら、前に僕は記憶を失くしてるって言ったでしょ? そのことです」
「別に死んでないじゃん……」
「……きっと同じことですよ……あの場所に来る前の僕は、もういませんから」
「だからなに……あんたが人間であることに変わりはないでしょ」
「まぁ、そうですね」
と、僕は笑って見せた。
フラムさんは、少し苛立った様子で僕を睨みつけてくる。
「……何が言いたいわけ?」
「目が覚めたら、いつの間にかあの草原に一人でいました」
「……? なによ、急に……」
僕は少し前の自分を思い出す。
そこに答えがあると思ったから。
「だから、僕には家族も友人もいません。それどころか、知っている人すらいなくて……おまけにこの世界での生き方も何も知らなくて……まるで異世界にでも迷い込んだかのような気分でしたよ」
「……」
「正直、寂しかったです……もしかしたら、この世界には僕以外誰もいないんじゃないかなんて思ったこともあります。このままずっと一人なんじゃないかって……」
「……」
フラムさんは静かに地面に降りると、その場に腰を下ろした。
「だけど、違いました。その時、初めて僕に声をかけてくれた妖精がいたんです」
今なら分かる。それがどんなに勇気のいることだったのか。
「……フェルピー?」
「はい。すこく嬉しかったです。僕にとってはそれが初めての会話でしたから。それで、友達にもなることが出来て……きっと僕は、それが人間だろうと妖精だろうとそんなことはどうでも良かったんだと思います。話しかけてくれた相手が、友達になってくれた相手が、フェルピーだったから嬉しかったんだと……フラムさんとカリムさん、二人に会って気づくことが出来ました」
「え?」
「だって僕は、フラムさん達とも友達になりたいと思ってますから。人間だからとか、妖精だからとか、そんなことは関係なく……フラムさんとカリムさんだから仲良くなりたいんです」
「……」
「まだ信用されてないかもしれませんが、一緒に友達を助けに向かってくれるフラムさん達を、僕は勝手に友達だと思ってます。今のフェルピーと同じように、もし二人が危険な目にあっているのなら、僕が絶対に助けます。怖い目にあっているのなら、僕が絶対に守ります。だから———」
「……」
「だから、僕のことを怖がらないで」
まっすぐフラムさんに向かってそう伝えた。
「な、なに、恥ずかしいこと言ってんのよ」
「えっと、確かにちょっと照れくさいですね。でも、これ以外伝え方が思いつかなくて」
「勝手に友達とか……なにそれ……」
「すみません……僕、友達いたことないんで、こんな言い方しか出来なくて……」
「それに、助けるとか、守るとか……弱いくせに」
「そうですね……だから、フラムさん達の力を貸してください」
少しだけ頬を赤らめたフラムさんは、
「……そこまで言うなら、しょうがないわね」
と、小さな声で口にした。
その表情に先ほどまでの恐怖の色はもう無かった。
「ごめん、ちょっと取り乱しちゃったかも……」
「いえ、誰だって怖いですよ。僕の方こそ、気づいてあげられなくてごめんなさい」
「え? あ、ううん、悪いのは私の方で……ってそうじゃなくて! そ、その、仕方ないから、許してあげてもいいわ!」
フラムさんは、急いで僕の頭より高い位置まで飛び上がると、ふんぞり返るように見下ろしてくる。
いつだったかのフェルピーを思い出して、思わず笑いそうになってしまった。
「いつも通りのフラムさんに戻ってくれて良かったです。そろそろ行きましょうか」
「そうね。だらだらしてるとまたカリムに、遊んでいたのか? とか文句言われそうだしね……あ、あと、その……」
「どうかしましたか?」
「えっと……あの……さっきのこと、カリムには内緒だから……」
「さっきのこと? あ、はい! 二人だけの秘密にしましょう!」
「わ、分かればいいのよ」
フラムさんは、照れたように僕のフードの中に入って行った。
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