第九話:種はどこに
「今日一日で一体どれだけ事件が起こるんだ! 暴力事件や窃盗ならまだしも、殺人が同時に発覚なんざ数年に一回レベルの日だぞ!」
連続婦女暴行事件……の関係者らしき若者の殺人事件捜査のための特別捜査本部の設立が決まりドタバタしていた本庁捜査一課は、更なる大事件に阿鼻叫喚の有り様となっていた。
「伊万里、被害者は?」
「今確認が取れました。
「……再犯、というわけか」
「背負っていたリュックの中から、もう一人の
「……足を洗い損ねて、夜遅くに電気が消えていて車庫に車がない家を見てついつい忍び入った……って所か。経験だけある素人だな」
伊万里警部補と三枝警部はペアとして特捜の用意をしながら、思わぬ通報により混乱する情報を整理していた。
「それで、もう一人は……昼の事件の?」
「はい。
「……可能性は薄い、と思うが……なにかしらの関係ありと一応見なして捜査が進むだろうな」
「はい。今は阿部巡査部長が、奥様から話を聞いています」
「辛いだろうな……。祖父さんの死亡を確認させられたその日の夜に……」
「旦那が目の前で、自分の首ぶっ刺して死んだんだ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(どう考えてもおかしい。先日の詐欺グループの事件といい、この三件の事件は全部同じパターンだ)
三枝警部と別れ、今回の事件の捜査資料を纏めながら伊万里警部補は、ぼんやりとしていた自分の考えがやはり正しいのではないかと事件を振り返り思っていた。
余りにも状況が異質すぎる。
(最後の藤堂夏雄さんは分からないが、前二件の釘宮しのぶや仁科征史は普通に考えて大の男をあんな方法で殺害が出来る体じゃない。仁科さんはいまだ司法解剖中だけど、釘宮さんの体の筋肉は一部が過剰付加でボロボロになっていた)
詐欺グループの中核二名を殺害した女子高生の体はかなりボロボロになっていた。
外傷によるものではなく、自分の肉体を超える負荷が一気に掛かったためだろうと調べた医師は言っていた。
(やはり、スキル。非合法に作成されたスキルを入手した――あるいは、偶然取ってしまった結果、体に負担がかかるような動きをするようになった……と思う。というか、ほぼ確信しているが……とはいえ……)
結局の所、スキルを使うのはその当人だ。
どれだけ体がスキルの動きに引っ張られようとしても、体が悲鳴を上げて動きを止めるハズだ。
人の感覚をコピーした所で、自分の感覚が消えるわけではない。
無理な動きをすれば当然痛いし、反射だって働く。
(それを押さえ込むほどのスキルなんて技能開発倫理法を無視した、スキルドラッグに匹敵するほどのモノでしかありえない)
だが、非力な人間でも成人男性の複数殺害を可能とするほどのスキルなど、作ろうとすればよく闇ルートで使われるような粗雑な機材では不可能だし、そもそも――
(そもそも、殺人に関する技能のコピー元なんて……誰なんだ?)
非力な人間が多数の人間を殺害する。
そんな事が可能なスキルなど、コピー元は相当限られる。
自衛隊や警察官の中でも、それこそ一握りの存在だ。
他に、考えられる事があるとすれば……。
「……すでに殺人を犯した者」
「殺人犯?」
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