第43話 どこにいるのか?

珍者ちんしゃ様は、なんかすごいこと士を探しに来たんですよねヘシッ?」


「はい、その通りです。どちらにいらっしゃるのでしょうか?」


「町の近くにある山の中に住んでいるという話を聞いたことがありますよヘシッ」


「山ですか……」


 なら、今日は宿に泊まって、明日行ってみるとしようか。



「えっ!? 俺は町の近くにあるウトの中にいるって、聞いたぞヘシシッ!?」


 もうひとりのやりを持っているおじさんが、そう言った。


「ええっ!? そうなんですか!?」


「はい、そう聞きましたヘシシッ」


「それはどなたからですか?」


「町の中を歩いている時に、そういう話が聞こえてきただけなので、誰が言っていたかは分かりませんヘシシッ」


「私も同じですねヘシッ」


「そうなんですか」


 又聞きかよ。

 不確かな情報だなぁ。


「なら、どっちにいるんだうす?」


「しょ~しょしょしょっ! どっちにもいるんじゃないか?」


「ああ、ふたりいるってことか。まあ、あり得なくはないな」


「どっちに雌がいるんですだぜか!?」

「どっちに雌がいるんだぜだぜか!?」

「どちらに雌がいますますか!?」


「そこは不明ですヘシッ」

「性別までは分かりませんヘシシッ」


「おい、やめろ!? そんなこと聞かなくていいって!」



「とりあえず、今日は休もうよ、いちょ~」


「そうだな。それじゃあ、町に入らせてもらいますよ」


「はい、どうぞ、珍者ちんしゃ様ヘシッ!」



 町に入った。


 ここも西洋風のキレイな町並みだな。


「親父殿、雌がいるですだぜ!!」

「あそこにも雌がいるだぜだぜ!!」

「あちらにも雌がいますますよ!!」


「町なんだから、当然だろ」


「ここで一番良い雌を探そうですだぜ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「そいつは名案だぜだぜ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「お父様、やりましょうしょう!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「探すのは、宿とハモノ買取所だっての!!」



「ここが買取所でありますかね?」


 そこには、デカい大根のような建物があった。


「そんな感じがするなぁ」


 王総理大統領都と同じ形だしな。


「しょ~しょしょしょっ! なら、入ってみようぜ!」


「ああ、そうだな」



 中に入った。


 中も王総理大統領都と同じで、役所みたいな感じだな。


 職員たちの服装も同じだな。

 葉っぱで作られた服を着ている。


 あれはハモノ買取所共通の制服なのか?


 訳が分からんなぁ。


 まあ、そんなのどうでもいいか。



 窓口にやって来た。


「すみません。ハモノを買い取ってもらえますか?」


「かしこまりましたトリジョッ」


 窓口のおばさんに、オオスレタスムを買い取ってもらった。



 あっ、そうだ。

 ついでに、この人にも聞いてみよう。


「すみません。もうひとついいですか?」


「はい、どうぞトリジョッ」


「我々はなんかすごいこと士を探しているのですが、何かご存じありませんか?」


「町の近くにある森の中に住んでいると聞いたことがありますよトリジョッ」


 また違う場所だと!?


「それはどなたからですか?」


「町中で、そのようなウワサを耳にしただけですので不明ですトリジョッ」


「そうですか……」


 どういうことなんだ?


 まあ、いい、次は宿を探そうか。



「ここが宿みたいだぜうす」


「ああ、そのようだな」


 ヤドカリが背負ってそうな巻貝みたいなデザインの建物だ。


 入口の上部に『宿』と書かれた壁面看板が取り付けられている。


「怪しげな建物だなぁ」


「そうだなほしっ! 他を探すかほしっ?」


「ええ~、もう暗くなって来たよ。面倒だし、ここにしようよ、いちょ~」


「仕方ない、そうするか」



 中に入った。


 中は普通の旅館みたいな感じだな。



 受付にやって来た。


「すみません。四人くらいで泊まれる部屋はありますか?」


「はい、ありますよヤドッ。お泊りになられますかヤドッ?」


 受付にいたおばさんが、そう言った。


「はい、お願いします」


 お金を払った。



 この人にも聞いてみるか。


「なんかすごいこと士ですかヤドッ? この町の近くにある遺跡に住んでいると聞いたことがありますよヤドッ」


 また違う場所かよ!?


「それはどなたからですか?」


「町を歩いている時に、耳にしただけなので、誰が言っていたのかまでは分かりませんねヤドッ」


「そうですか……」



 客室にやって来た。


 ビジネスホテルみたいな部屋だな。


「山に、ウトに、森に、遺跡でありますか」


「しょ~しょしょしょっ! なんかすごいこと士は、いろんな場所にいるんだな!」


「いや、これはちょっとウサンクサイだろ」


「確かにそうだなうす。誰かが偽情報を流している気がするぜうす」


「「ウワサの出所を探ってみた方が良いかもしれないのであるもっち」」


「ああ、そのようだな」


「では、一番良い雌を探すついでに探してみるですだぜ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ああ、それが良いだぜだぜ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「がんばりましょうしょうね、お父様!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「探すのは、なんかすごいこと士だけだっての!!」


「いいや、良い雌を探すべきですだぜ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「その通りだぜだぜ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「一番良い雌を探しましょうしょう!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「やかましい!」


「アオォォォンッ! アオォォォォォンッ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ウオォォォンッ! ウオォォォォォンッ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「オオォォォンッ! オオォォォォォンッ!! オオォォォォォォォンッ!!!」


えるな! 静かにしろ!!」



「ん? 誰か来たみたいだぜほしっ!」


「えっ? なんだろう?」


 もしかして、うるさすぎて、隣の人が文句を言いに来たのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る