第41話 子

 白いローブを着た神官みたいなおばさんがやって来た。


「これは…… どうやら妊娠しているようですねピピャピャピャピャ。おめでとうございますピピャピャピャピャ」


 そして、ネヤユーワ、ナウアーエ、マリヒーア、ケイアラーダ、モノスズルーニ、ミャジュギーナ、トゥゲェルーカにそう言った。


「マスターじいさんマスター、あの人は誰なんだ?」


「『妊娠検査士』の方だピピョーン」


「名前通りのことができる副業なのか?」


「その通りだピピョーン」


 ほう、そんなものもあるのか。



「父親は、そこにいる男性ですよねでござる?」


 ネヤユーワが俺の方に手を向け、そう質問した。


「はい、皆さん、そうですよピピャピャピャピャ」


 そんなことまで分かるのか。

 すごいな。



「これで使命を果たしたわねっすわ~」


「一生ダラダラできるっしょ~」


「そうなのか?」


「王総理大統領が、珍者ちんしゃの子を産んだら、国から手厚く保護されるって言っていたわでやんす」


「これから子育てしながら、のんびり暮らすわでやす~」


「そうなんだ」


 こいつらは、それ目当てなのか。



「子供はできたけど、仲間はできなかったな。どうすれば良いんだ?」


「俺様たちだけで行くしかねぇんじゃねぇかうす?」


「そうだな」


「仲間ならいるぞとげぇ」


「えっ? どういうことだ?」


「こいつを連れて行けとげぇ」


 トゥゲェルーカが銀色のトゲを差し出してきた。


 なぜか筋骨隆々、小麦色、無駄毛なしの人間の手足が生えている。

 身長二〇センチくらい。


「これはなんだ?」


「私の特殊能力で出した『子とげぇ』だとげぇ」


「なんだそれは!?」


「私の分身のようなものだとげぇ。強いぞとげぇ」


「そ、そうなのか……」


 こいつが強い!?

 本当なのか!?


「ほら、挨拶しろとげぇ」


「分かりやした、母ちゃんことげぇ。お初にお目にかかりやすことげぇ。あっしは子とげぇでやすことげぇ。よろしくお願いしやすことげぇ」


「あ、ああ、よろしくな」


 俺たちも自己紹介をした。



「アルヴェリュード様、この子も連れて行ってください」


 ミャジュギーナが赤いスリングショット水着を差し出してきた。


「今度はなんだ?」


「この子はワタクシの特殊能力で出した『子水着』ですわ」


 子水着!?


「子とげぇと同じようなものなのか?」


「はい、その通りですわ。この子も強いですわよ」


 えええええっ!?

 ただの水着にしか見えないぞ!?


「さあ、挨拶なさい」


「はい、お母様こみじゅ。お初にお目にかかりますこみじゅ。わたくしは子水着と申しますこみじゅ。よろしくお願いしますこみじゅ」


「ああ、よろしく」


 俺たちも自己紹介をした。



「子水着って、自分で動けるのか?」


「はい、このように飛んで移動することができますこみじゅ」


 子水着が空を飛んだ。


「アルの旦那、あっしも飛べやすよことげぇ」


 子とげぇも空を飛んだ。


「そうなのか。なら、移動は問題ないな」



「アルヴェリュード様、この子たちも連れて行ってくださいでござる」


 ネヤユーワが変な服を大量に渡してきた。


「これも子とげぇや子水着みたいなものなのか?」


「いいえ、珍者ちんしゃにふさわしい服ですでござる」


「なら、いらないっての!?」


「そう言わずに、連れて行ってあげてくださいでござる!!」


「いらないって! 荷物になるだろ!?」


「ならば、ここで着てくださいでござる!」


「お断りだ!」



「さて、次は『ナンカスゴイコトシノイル町』に行けば良いんだよな?」


「うむ、そうだピピョーン。そこで『なんかすごいこと士』を探すのだピピョーン」


「どんな人なのか知ってるか?」


「知らんピピョーン」

「わたくしも分かりませんわ」


 みんな知らないようだ。


「現地で聞き込みをしてみろピピョーン」


「ああ、分かったよ」



「そういえば、ナンカスゴイコトシノイル町って、どこにあるんだ?」


「地図を用意しておいたピピョーン。見てみろピピョーン」


 マスターじいさんマスターから地図を受け取った。



「ええと、現在地は『ショッパァナ王総理大統領都おうそうりだいとうりょうと』だよな?」


「うむ、そうだピピョーン」


「で、ここがナンカスゴイコトシノイル町か。近いんだな」


「うむ、王総理大統領もそう言っていただろうピピョーン」


「ああ、そういえば、そうだったな」



「さて、そろそろ出発しようかな」


「うむ、気を付けてなピピョーン」


「アルヴェリュード様、どうかご無事で」


「必ず帰って来いよとげぇ。待っているからなとげぇ」


「ああ、ありがとう」



「今生の別れかもしれないので、この服を着ていただけませんかでござる?」


 ネヤユーワがそう言って、カバのような生物の着ぐるみを差し出してきた。


「縁起でもないこと言うな! お断りだ! 絶対に生きて戻って来るからな!!」


「はい、珍者ちんしゃにふさわしい服を用意して、お待ちしておりますでござる」


「それはいらないっての!?」



「おみやげよろしくっすわ~」

「ここよりも豪邸が建てられるくらいのお宝が良いっしょ~」

「浮気はほどほどにねでやんす~」

「浮気のしすぎで刺されないようにねでやす~」


「やかましい!! それじゃあ、行って来る!!」


「「私たちの冒険はこれからであるもっち」」


「なんでそれを言った!?」


「「なんかそんな感じがしたからであるもっち」」


「訳分からんぞ!?」

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