第36話 王総理大統領と謁見

 玉座と思われる場所にモザイクがかかっていた。


 いや、あれは衝立ついたてが置いてあるのか。


 なんであんなのあるんだ?


 あっ、そういえば、珍者ちんしゃイデザテレオーズの冒険に出て来る王総理大統領もモザイクがかかっていたな。


 王総理大統領って、そういうものなのだろうか?


 それとも、防犯のためなのか?


 よく分からないな。


 まあ、いいか。



 おや?

 衝立ついたての隣に、ドレス姿のすさまじい美女が四人に、V字のスリングショット水着みたいなものを着た、スタイル抜群のすさまじい美女がいるぞ。


 彼女たちは王妃なのかな?


 いや、王総理大統領だから、王総理大統領妃になるのか?


 まあ、そこはどうでもいいか。


 それよりも、なんだあの格好は?


 痴女か?

 変態なのか?


 この国って、もしかして、ヤバいのか?



「親父殿、良い雌がいるですだぜ!」


「ああ、分かったから、大人しくしていろよ。ヘタしたら、処分されるかもしれないんだからな」


「分かりましたした」



「さあ、ゆこうかピピョーン。礼儀をド忘れしたなんてことはないなピピョーン?」


「ああ、そこは問題ないよ。ただ、ものすごく今更だけど、ショーカたちが付いて来ちゃっているぞ。大丈夫なのか?」


「そのくらい問題ないピピョーン。では、ゆくぞピピョーン」


「ああ」


 こいつらが、そのくらいなのかぁ。



 王総理大統領の前まで移動し、ひざまずいた。


「よくぞ来たオウ~ン。珍者ちんしゃアルヴェリュードよオウ~ン」


 王総理大統領が、そう言った。


 オウ~ン?

 また『語尾におまけが付くことがある能力』の仕業か。


「余が『ショッパァナ王総理大統領国』の王総理大統領『ソノウ・チシーヌカモ・ショッパァナ五〇九六八世』だオウ~ン」


 そのうち死ぬかも!?

 なんだその名前は!?


 それに、五〇九六八世って、どういうことだ!?


 この国、何年続いているんだよ!?


 もしかして、盛ってたりするのか!?


 まあ、そんなのどうでもいいか!!


「今、世界はなんかすごいことになっていて、非常にマズい気がするオウ~ン」


 曖昧!?

 超絶圧倒的曖昧っぷりだな!!


「というわけで、高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変になんとかしてくれオウ~ン」


 なんじゃそりゃぁっ!?


 あれ?

 このセリフ『珍者ちんしゃイデザテレオーズの冒険』と同じじゃないか?


 まあ、そこはどうでもいいか。


「命の危険があるかもしれんし、ないかもしれんオウ~ン。危険な任務になるかもしれんし、ならないかもしれんがやってくれるなオウ~ン?」


 危険があるのかないのか、ハッキリしないな!?


 危険があるのなら、やりたくないぞ!


「快く引き受けてくれるとは、さすがは珍者ちんしゃだオウ~ン」


 ええええええええええっ!?

 何も言ってないのに、引き受けたことになっているぞ!?

 それはひどすぎないか!?


「では、まずは町にある『ボッチがとりあえず集まるところ』に行き、仲間を集めるのだオウ~ン」


 ボッチがとりあえず集まるところ!?


 なんだそれは!?

 訳が分からんぞ!?


 そこ、本当に仲間が見つかるのか!?


「その次は、ここの近くにある『ナンカスゴイコトシノイル町』に行き『なんかすごいこと士』を探し、この世界でどんなすごいことが起こっているのか聞くのだオウ~ン」


 なんかすごいこと士!?

 なんだその訳の分からんものは!?


 名前通り『なんかすごいこと』が何か分かる人なのか!?


 それと、町の名前!

 もっと工夫しろよ!?



「報酬についてだがオウ~ン」


 報酬!?

 あるのか!?


「ここにいる五人の王総理大統領女をやろうオウ~ン。妻として迎えるが良いオウ~ン」


 その超美女五人を妻に!?


 というか、王総理大統領女おうそうりだいとうりょうじょって、なんなんだ!?


 王総理大統領の娘なのだろうか!?


 まあ、多分そうなんだろうな!


「そこの雌たちをもらえるですだぜか!?」

「本当なのだぜだぜか!?」

「どうなのですですか!?」


「おい、大人しくしてろって、言っただろ!? 申し訳ありません、すぐに黙らせます!」


「良いオウ~ン。先程の発言にウソ偽りはないオウ~ン」


「いつもらえるのですですか!?」


「むっ、言い忘れておったなオウ~ン。王総理大統領女たちは前払いだオウ~ン」


 ええっ!?

 王総理大統領女、前払い!?


 それって、すぐ妻にして、面倒を見ろってことか!?


 それは困るぞ!?

 家、どうしよう!?

 今の家を使わせてくれるのだろうか!?

 それとも、実家に帰れば良いのか!?


「おおっ、王総理大統領、素晴らしいですだぜ!!」

「太っ腹だぜだぜ!!」

「さすがですですね!!」


「静かにしてろ!」


「アオォォォンッ! アオォォォォォンッ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ウオォォォンッ! ウオォォォォォンッ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「オオォォォンッ! オオォォォォォンッ!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「やかましい!? えるな!!」



「それから、成功報酬はなんか適当に用意しておくオウ~ン」


 雑!?

 本当にもらえるんだろうな!?



「それと、これを授けようオウ~ン」


 兵士と思われる人から、金色で『珍者ちんしゃパス』と書かれた赤いカードを受け取った。


「それは『珍者ちんしゃパス』というものだオウ~ン。それを所持していると、他人の家の中を勝手に調べても罪にはならないオウ~ン」


 なんじゃそりゃぁっ!?

 ゲームか!?


「ただし、家の中のものを破壊したり、奪ったりした場合は、罪となるオウ~ン」


 そうなの!?

 タンスやつぼの中身を持っていっていいわけではないのか!?


 そこはゲームっぽくないな!


「有効に活用するが良いオウ~ン」


 そんなの何に使えば良いんだよ!?


 まあ、何か考えてみるか。


「話は以上だオウ~ン。では、ゆけ、珍者ちんしゃアルヴェリュードよオウ~ン!!」

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