第34話 スタイリストに教わる

 その後も、変な服を何着も着せられた。


「これで持って来たものはすべてですでござる。アルヴェリュード様、どれにいたしましょうかでござる?」


「どれも却下! もっとマトモなのはないんですか!?」


「どれも珍者ちんしゃとしては、マトモですよでござる」


「普通の人として、マトモなのにしてくださいよ!?」


「それでは面白くないじゃないですかでござる」


「面白くする必要ないでしょ!?」


「ありますよでござる。どうやらアルヴェリュード様は、珍者ちんしゃとして未熟なようですねでござる」


「なんでそうなるんです!?」


「この服の良さが理解できないからですよでござる」


「そんなの当たり前でしょ!?」


「はぁ、仕方ないですねでござる。アルヴェリュード様に、この服の良さをお教えしましょうでござる」


「遠慮しておきます!!」


「親父殿、ここは申し出を受けるべきですだぜ!!」


「そうだぜだぜ! せっかくだから、教えてもらおうだぜだぜ!!」


「そして、良い雌を手に入れましょうしょう!!」


「やかましいぞ! お前らは黙ってろ!!」


「そうはいかないですだぜ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「そうだぜだぜ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「雌を手に入れるチャンスですですよ!! オオォォォォォォォンッ!!!」


えるな!」


「では、まずはこの服の良さからお教えしましょうでござる」


 ネヤユーワさんが貝殻ビキニ水着を持ち上げた。


「そんなの不要ですって!!」


「この服の良さはですねでござる……」


「無視!?」


「この見た目の面白さですねでござる」


「それだけ!?」


「それだけですねでござる」


「ええ……」


「では、次はこの服の良さをお教えしましょうでござる」


「いや、もういいですって……」



 夕方になった。


「おや? もう日が落ちてきましたねでござる。では、本日はこのくらいにしましょうでござる」


「えっ!? もしかして、明日もやる気なんですか!?」


「当然ですでござる」


「ええ……」


「ということは、また会えるということですだぜ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「やったぜだぜだぜ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「うれしいですです!! オオォォォォォォォンッ!!!」


 ガギアキースセギトたちが、またネヤユーワさんの周囲で踊り始めた。


「お前らは大人しくしていろ!」


「それでは、わたくしはこれで失礼しますでござる」


「もう帰るのですだぜか!?」

「せっかくだから、夕飯を一緒に食べようだぜだぜ!!」

「せっかくですから、泊っていってくださいさい!!」


「何言ってんだよ!?」


「いえ、さすがにそれは遠慮しますでござる。では、失礼しますでござる」


 ネヤユーワさんが帰って行った。



「服は決まったのかピピョーン?」


「いや、決まらなかった。マスターじいさんマスター、あの人、変な服ばかり薦めてくるんだけど、どういうことなんだ? 珍者ちんしゃスタイリストって、そういうものなのか?」


「どんな服を薦めてきたのだピピョーン?」


「葉を両胸と股間に張り付けただけの服とかだな」


「そうなのかピピョーン」


「そんな服で王総理大統領に謁見して良いのか?」


「うーむ、まあ、珍者ちんしゃなら、問題ないと思うぞピピョーン」


「ええ……」


 珍者ちんしゃって、どんな服を着ていても許されるのか?



 次の日。


「おはようございますでござる」


 朝からネヤユーワさんがやって来た。


「おはようですだぜ!!」

「いらっしゃいだぜだぜ!!」

「歓迎しますますよ!!」


「ありがとうございますでござる」


 ガギアキースセギトたちが、またネヤユーワさんの周囲で踊り始めた。



「では、今日も珍者ちんしゃにふさわしい服というものをお教えしましょうでござる」


 ネヤユーワさんが、袋から変な服を大量に取り出した。


 また妙なものを持って来たなぁ。


 ん?

 あれは?

 オオコンドリの着ぐるみか?


 なんであんなものまであるんだよ……



「そういえば、珍者ちんしゃイデザテレオーズは、マトモな格好をしていたじゃないですか。なんでネヤユーワさんは、こんな服を薦めてくるのですか?」


珍者ちんしゃイデザテレオーズですかでござる? ああ、確かよろいを着ていましたねでござる」


「ええ、そうですよ。あれで良いじゃないですか」


「ダメですねでござる。あんな普通の格好では、珍者ちんしゃとは言えませんでござる」


「いや、言ってるというか書いてあるじゃないですか」


「書いてあってもダメなものはダメですでござる。さあ、始めますよでござる」


「いや、その前に、この服を着ようですだぜ!!」

「ああ、そうしようだぜだぜ!!」

「ネヤユーワさんに似合うと思いますますよ!!」


 ガギアキースセギトたちが絆創膏ばんそうこうのようなもの指差し、そう言った。


「それも服なんですか!?」


「はい、そうですよでござる。では、まずはそれを着てみましょうかでござる」


「ネヤユーワが着ろですだぜ!!」

「ああ、姉ちゃんが着ろだぜだぜ!!」

「ネヤユーワさん、お願いしますます!!」


「では、わたくしも着ましょうかでござる」


「ええっ!?」


「アオォォォンッ! アオォォォォォンッ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ウオォォォンッ! ウオォォォォォンッ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「オオォォォンッ! オオォォォォォンッ!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「うるさい! えるな!!」


「では、一緒に着替えましょうでござる」


「お断りだ!?」


「まあまあ、そう言わずに着てみましょうよでござる」


「やめろ!? 来るな!?」


 ぎゃああああああああああああああああああああっ!!!!!

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