第32話 謁見するから

「アルヴェリュードよ、明日は『珍者ちんしゃスタイリスト』がやって来るぞピピョーン」


「なんだそれは?」


珍者ちんしゃが身に着けるものを選んでくれる者だピピョーン」


「なんでそんな人が来るんだ?」


「もうすぐ王総理大統領に謁見することになるからだピピョーン」


 ああ、そういえば、そろそろ一五歳になるな。

 あと、一か月くらいだ。


「その時に着ていくものを選ぶというわけだピピョーン」


「分かったよ」


「そのスタイリストとやらは、雌なのですだぜか!? アオォォォォォンッ!!」

「マスターじいさんマスター、どうなんだぜだぜか!? ウオォォォォォンッ!!」

「若くて良い雌ですですよね!? オオォォォォォンッ!!」


「うるさいぞ、お前ら!?」


「そこは知らんぞピピョーン」


「雌が良いですだぜ! アオォォォォォンッ!!」

「雌が良いだぜだぜ! ウオォォォォォンッ!!」

「若くて良い雌が良いですです! オオォォォォォンッ!!」


「わがまま言うなっての!」


「アオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!」

「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!」

「オオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!」


「やかましい! えるな!!」


「しょ~しょしょしょっ! またハモノと戦って発散させた方が良いんじゃないか?」


「ああ、そうだな。行こうか」



 次の日。


 銀髪セミロング、赤紫眼、スタイル非常に良し、メイド服着用の美女が、俺の部屋にやって来た。


「お初にお目にかかりますでござる。わたくしは珍者ちんしゃスタイリストの『ネヤユーワ・サヨゴロク』と申しますでござる。ネヤユーワとお呼びくださいでござる。よろしくお願いしますでござる」


 メイド服の美女が、そう言った。


 語尾に『ござる』が付いているな。

 『語尾におまけが付くことがある能力』のせいなのかな?


 俺たちも自己紹介をした。



「雌ですだぜ!!」

「雌だぜだぜ!!」

「良い雌ですです!!」


 ガギアキースセギトたちが、ネヤユーワさんの周りで踊り出した。


「おい、お前ら、何やってんだよ!?」


「アオォォォンッ! アオォォォォォンッ!! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ウオォォォンッ! ウオォォォォォンッ!! ウオォォォォォォォンッ!!!」

「オオォォォンッ! オオォォォォォンッ!! オオォォォォォォォンッ!!!」


「落ち着け!?」


「さすがは珍者ちんしゃですねでござる。珍妙なことが、もう起こっていますでござる」


「驚かないんですか?」


珍者ちんしゃとお会いするのです、この程度のことは想定済みですでござる」


「はぁ…… そうなんですか……」


 珍者ちんしゃって、そういう扱いなのか。



「ええと、服を選ぶんですよね?」


「はい、その通りですでござる」


「どんな服があるのですか?」


「こちらはいかがでしょうかでござる?」


 ネヤユーワさんが、白いホタテのような貝殻で作られたビキニ水着のようなものを差し出してきた。


「……これを着て、この国の一番偉い人に会えというのですか?」


「はい、その通りですでござる」


「いや、これはマズいでしょ!?」


「そうでしょうかでござる? 珍者ちんしゃという感じがしますよでござる」


「しょ~しょしょしょっ! 確かにするな!」


「そうだね、いちょ~」


「いや、だからって、こんなの着てたら、捕まって処分されるんじゃないか?」


珍者ちんしゃは変なことをしていて当然ですので、捕まったりはしないと思いますよでござる」


「ええ……」


 珍者ちんしゃって、国からもそんな扱いをされるのかよ!?



「この服は絶対に親父よりも、姉ちゃんの方が似合うだぜだぜ!!」


「うむ、その通りですだぜ!!」


「というわけで、ただちに着てくださいさい!!」


「おい、やめろ!?」


 それはセクハラだぞ!?


「いえ、わたくしよりもアルヴェリュード様の方が似合うと思いますでござる」


 ええっ!?

 そんなバカな!?


「いや、それはあり得ませんよ!」


「いえいえ、そのようなことはありませんでござる!」


「いやいや、ありますよ!」


「いえいえいえ、ありませんでござる!」


「いやいやいや、ありますって!」


 この人、服のセンス大丈夫なのか!?



「仕方ありませんねでござる。こうなったら、わたくしとアルヴェリュード様で、この服を着てみましょうでござる」


「なんでですか!?」


「どちらが似合うか、ハッキリさせるためですでござる!」


「そんなことする必要ありませんよね!?」


「いや、必要あるですだぜ!!」

「ああ、あるだぜだぜ!!」

「はい、必要ありますます!!」


「その通りですでござる! さあ、アルヴェリュード様、これを着てくださいでござる!! わたくしも別室で着替えてきますでござる!!」


「えええええっ!?」


 ネヤユーワさんから、水着のようなものを押し付けられた。


「では、我が部屋に案内するですだぜ!」

「俺も行くだぜだぜ!!」

「私も行きますます!!」


「そんなことしなくていいっての!!」


 ガギアキースセギトたちを捕まえた。


「親父殿、離してくれですだぜ!!」

「そうだぜだぜ、親父! 離してくれだぜだぜ!!」

「お願いしますますよ、お父様!!」


「ダメに決まってんだろ!!」


「では、いったん失礼しますでござる」


 ネヤユーワさんが部屋から出て行った。


「ああ、雌が行ってしまったですだぜ! アオォォォォォォォンッ!!!」

「ウオォォォォォォォンッ!!!」

「オオォォォォォォォンッ!!!」


「やかましい! いちいちえるな!!」

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