第26話 風の感じすぎ注意

「一本じゃ足りないだろうから、もっと買っておこうだぜだぜ」


「そうだな」



 さて、どれにしようか?


「ん? これ何か入っているな」


 半月切りにした大根みたいだな。


「それは『ハモノ酒』の一種だなピピョーン」


「なんだそれは?」


「名前通り、ハモノを酒で漬けたものだピピョーン」


「へぇ、そんなのもあるんだ」


 ハブ酒みたいなものなのかな?



「それは『オオコンドリ酒』のようだなピピョーン」


「ああ、あいつなのか」


 あの大根に鶏の羽と足のあるヤツ。


「こんなのうまいのだぜだぜか?」


「独特な風味と苦味があって、なかなかうまいぞピピョーン」


「そうなんだ」


「隣にも何か入ったお酒がありますますね」


「それは『スキャベツム酒』と『ウトウト酒』だなピピョーン。それもうまいぞピピョーン」


「そうか。じゃあ、この三本も買おうか」



「それで十分だろうピピョーン。さあ、会計をして帰ろうピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 帰って来た。


「おう、アルヴェえ、良い風はあったかうす?」


「ああ、良い風かは分からないけど、買ってきたぞ」


「そうかうす! なら、さっさと入れなうす!」


 風のテータスの中に酒を入れた。



「よっしゃっ、風を感じるぜうす! あ~、こいつも良い風だなうす!!」


 風のテータスが酒を飲んでいるようだ。


 どうやって飲んでいるのだろうか?


 訳が分からないなぁ。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!! きたぜ、きたぜうす!!!!!」


 また風のテータスが回転し始めた。


「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」


 そして、倒れた。


「おい、どうしたんだよ、風のテータス!?」


「………………………………」


「何も言わないな」


「もしかして、酔い潰れたのですだぜか?」


「どれも強い酒だからなピピョーン。その可能性が高いピピョーン」


 ええ……



「こいつ、ステータスウィンドウとして使えないのではないか?」


「ああ、俺もそんな気がするだぜだぜ」


「しょ~しょしょしょっ! しょ~ちゃんもだ!」


「マスターじいさんマスター、もう一回ステータスウィンドウを取りに行くことはできるのか?」


「それは…… 確か記録にはなかったはずだピピョーン。ステータスウィンドウをふたつ手に入れる必要はないからなピピョーン」


「そうなんだ」


「なら、試してみようだぜだぜ!」


「そうだな。またステータスウィンドウの洞窟に行ってみよう」


「今日はもう日が沈むピピョーン。明日にしろピピョーン」


「ああ、そうだな」



「そういえば、このステータスウィンドウ麺はどうしようか?」


「売れないのですだぜか?」


「こんなもの見たことないなピピョーン。売れないと思うぞピピョーン」


「しょ~しょしょしょっ! なら、食え! 食えそうな気がするから、食うんだ!」


「はいはい、分かったよ。じゃあ、料理してもらおうか」


 ステータスウィンドウ麺を食べてみた。


 うどんみたいな感じで、なかなか美味しかった。



 次の日。


「風のテータスが起きないな。二日酔いかな?」


「そうかもしれないですだぜ」


「お父様、どうしますますか?」


「寝かせておくか。では、行こうか」



 また『ステータスウィンドウがあるよ~~~んブピッピョ~~~ンの洞窟』にやって来た。


「それじゃあ、行って来るよ、マスターじいさんマスター」


「うむ、気を付けてなピピョーン」



 中に入った。


 また前方に長い通路が一本伸びている。


 では、進むとするか。



 通路を進んで行くと、広間があった。


 その中央に、化け物が二体いた。


 大きな鏡餅のようなものから、筋骨隆々で無駄毛のない小麦色をした人間の手足が生えている。


 身長二メートルくらい。

 下駄のようなものを履いている。


 長さ二メートルくらいの、何も書かれていない白いのぼり旗を持っている。


「あれはハモノか!?」


「いや、ステータスウィンドウかもしれないですだぜ」


「えっ!? まあ、確かに、風のテータスという前例がある以上、その可能性も否定はできないな」


「お父様、どうしますますか?」


「うーん、そうだなぁ…… 仕方ない、ここは声をかけてみようか。戦闘になるかもしれないから、準備はしておいてくれ」


「了解だぜだぜ!」



「君たちはステータスウィンドウなのか?」


「「私たちは『ハタモチ』であるもっち」」


 鏡餅の化け物たちが、そう言った。


「ハタモチ? なんだそれは?」


「「ハタモチはハタモチであるもっち」」


「だから、それはなんだよ!?」


「「ハタモチはハタモチであるもっち」」


「ええ……」


 なんなの、こいつら!?



「お前らはステータスウィンドウなのだぜだぜか?」


「「違うのであるもっち。私たちはハタモチであるもっち」」


「ハモノではないのですですか?」


「「違うのであるもっち。私たちはハタモチであるもっち」」



「敵ではなさそうでありますな。アル殿、先に進むであります」


「そうだな」


「「待つのであるもっち」」


「ん? 何か用なのか?」


「「あなたたちの横に立たせて欲しいのであるもっち」」


「なんでだよ?」


「「ハタモチであるからであるもっち」」


「訳が分からないんだけど……」


「「とにかく、立たせて欲しいのであるもっち」」


「親父、そのくらい良いんじゃないだぜだぜか?」


「危害を加えたりしないだろうな?」


「「加えないのであるもっち」」


「なら、そのくらい構わないぞ」


「「感謝するのであるもっち」」


 ハタモチたちが俺の両隣に立った。


 えっ!?

 ナニアレ!?

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