第25話 風探し

「風だうす。風を感じるぜうす」


「ああ、確かに、そよ風が吹いているな」


「気持ち良い風ですですね」


「そうだね、いちょ~」


「いや、それじゃねぇうす。俺様の言っていた風だうす」


「そっちなのか」


「風とは、いったいなんなのでしょうしょうかね?」


「サッパリ分からんですだぜ」


「しょ~しょしょしょっ! そろそろ町に着くぞ! 町にあるんじゃないか!?」


「そうなのか?」


「進んでいる方向から、風を感じるぜうす」


「なら、町にあるってことか」


「着いたら探してみようだぜだぜ」


「そうだな」



 町に着いた。


「さっきより強く風を感じるぜうす」


「やはり町の中にあるのか」


「どこにあるんだろうね? いちょ~」


「そういえば、球状のものを操る能力とぺちんぺちんを使った時にも、風を感じたんだよな?」


「はい、そう言ってましたしたよ」


「なら、金属の球を買った店にあるんじゃないかな?」


「可能性はありそうですだぜ!」


「見事な推理ですですね、お父様!」


「では、行ってみるであります!」



 店の近くにやって来た。


「むっ、強く風を感じるぜうす! ここに風があるぜうす!!」


「そこって、酒屋だよな?」


「うむ、酒屋だなピピョーン」


「風って、酒のことなのか?」


「さあな、そいつは自分の頭で考えなうす」


「ここまで来て、それかよ!?」


「お父様、とりあえず、お酒を買ってみましょうしょう」


「子供が買えるのか?」


「いや、無理だなピピョーン。ここは良識のある酒屋だから、売ってもらえんだろうピピョーン」


「なら、マスターじいさんマスターが買ってくれよ」


「仕方ない、そうするとしようかピピョーン」



 店に入った。


 ワインみたいなボトルが大量に並んでいるな。


「風のテータス、どれが良いんだ?」


「そいつは自分の頭で考えなうす」


「いや、飲んだことないから、分からないんだけど」


 前世でも、下戸であまり飲んだことがなかったしな。


「それでも自分の頭で考えなうす」


「分かったよ」



「うーん、どれにしようかな?」


「しょ~しょしょしょっ! これはもう適当に勘で選ぶしかないな!」


「そうだな。じゃあ、これにしようかな」


「それは『ぴピョぴょピョぴょ』と『ビョびゃビョびゃビョ』で作った『ぴビョぴょビョぽぺぴゅ~ん』という酒だピピョーン」


「そうなのか」


 変な名前の酒だなぁ。


「どんな酒なんだ?」


「甘い酒だなピピョーン」


「へぇ、そうなのか」


 そういえば、この体は酒が飲めるのだろうか?


 大人になったら飲んでみようかな。



 ぴビョぴょビョぽぺぴゅ~んを買ってもらい、店を出た。


「風のテータス、これをどうするんだ?」


「それがアルヴェえの風で良いんだなうす?」


「ああ、良いぞ」


「よし、なら、俺様の中に、そいつを入れなうす!」


 風のテータスの冷蔵庫のドアが開いた。


 中も日本にある普通の冷蔵庫みたいな感じだな。


「どこに入れても良いのか?」


「ああ、構わねぇぜうす」


「じゃあ、ここに入れるか」


 ドアポケットの下段にボトルを入れた。


「このあとは、どうするんだ?」


「当然、風を感じるに決まってんだろうす!」


「それって、酒を飲むのか?」


「そうとも言うぜうす!」


 なら、最初から、そう言えよ。



「では、風を感じるぜうす!」


「おい、こんな往来で飲む気かよ!?」


「しょ~しょしょしょっ! 酔って暴れたりしないだろうな!」


「ぴビョぴょビョぽぺぴゅ~んは、それなりに強い酒だピピョーン。念のため、家に帰ってからにした方が良いぞピピョーン」


「そうだな」


「仕方ねぇなうす! じゃあ、案内しなうす!」


「はいはい、分かったよ」



 自室に戻って来た。


「それじゃあ、感じるかうす」


「ああ、どうぞ」


「ほう、これはなかなか良い風だぜうす!」


「そうなのか?」


「ああ、果実の香りがするさわやかな感じの風だぜうす!」


 ぴピョぴょピョぴょとビョびゃビョびゃビョは、果物だから当然だろうな。



「あ~、良い風だぜうす! ここはアレをするしかねぇなうす!!」


 いきなり風のテータスが回転し出した。


「おい、何やってんだよ!?」


「回ってるだけだぜうす!!」


「いや、それは分かるって! なんでいきなり回るんだよ!?」


「なんか回りたくなってきたからだぜうす!!」


「ああ、そうかよ!」


 こいつ、酒乱なのか!?



「なあ、そろそろ俺の情報を見せてくれよ」


「まだだうす! まだ俺様は満足してねぇぜうす! もっと風を用意しろうす!!」


「ええっ!? まだ飲む気なのかよ!?」


「飲むんじゃねぇぜうす! 風を感じるんだうす!!」


「いや、酒を飲むんだろ!?」


「風を感じるだけだうす! 良いから、もっと大量に買って来いうす!!」


「仕方ないなぁ。マスターじいさんマスター、すまないけど、また頼むよ」


「うむ、良かろうピピョーン」


「さっきとは違う風にするんだぞうす!!」


「ゼイタクなヤツだなぁ。じゃあ、行って来るから、大人しく待ってろよ」


「早くしてくれようす!!」


「はいはい、分かったよ!」



 酒屋に着いた。


 さて、今度は何にしようかな?


 うーん、そうだなぁ……


「これにしようかな」


「それは『ピョーピョン鼻孔内の非常食味』で作った酒だなピピョーン」


 えええええっ!?

 鼻クソ味の回復アイテムの酒だと!?


 こんなので良いのかな!?


 まあ、いいか!!

 飲ませてみよう!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る