第24話 風のテータス

 通路を進んで行くと、また広間があった。


 その中央に、青く輝く冷蔵庫のようなものが置いてあった。

 大きさは、高さ二メートル弱くらい、幅七〇センチくらいだ。


 なぜか上に、赤く輝く臼のようなものが載っている。


「今度はなんだ?」


「あの中に、ステータスウィンドウが入っているのだぜだぜか?」


「いや、あれがハモノやわなの可能性もあるであります」


「そうだな」


「親父殿、どうするですだぜか?」


「とりあえず、あれを調べてみようか」



「お父様、この部屋、行き止まりですですよ」


「えっ? ああ、本当だ」


「他に道はなかったよね? いちょ~」


「ああ、なかっただぜだぜ」


「ということは、ここが最奥なのか」


「しょ~しょしょしょっ! そうなるな!」


「なら、あの中にステータスウィンドウが入っている可能性が高そうでありますな」


「そうだな。よし、あれを開けてみるか」


「そうだね、いちょ~」



 臼を載せた冷蔵庫のようなものに近付いた。


「むっ? 誰だうす?」


 臼を載せた冷蔵庫のようなものの方から声が聞こえてきた。


「えっ? こいつ、しゃべれるのか?」


「ああ、しゃべれるぜうす」


「お前はハモノなのだぜだぜか?」


「違うぜうす。俺様は『風のテータス』様だぜうす。よろしくなうす」


「あ、ああ、よろしくな、テータス」


「俺様は『風のテータス』だうす! 『風の』を付け忘れるなうす!!」


「えっ? ああ、分かったよ」


 俺たちも自己紹介をした。



「なんで『風の』に、こだわるんだぜだぜか?」


「それは俺様が風だからさうす」


「そ、そうなのか……」


 訳が分からなさすぎる……



「俺たちはステータスウィンドウを探しに来たんだけど、どこにあるか知らないか?」


「ステータスウィンドウうす? そいつは俺様のことだぜうす」


「えっ!? そうだったのか!?」


「ああ、そうだぜうす。どこからどう見ても、ステータスウィンドウだろうす」


 いや、どう見ても、臼を載せた冷蔵庫だけどなぁ。


 ん?

 ステータスウィンドウ。

 ス、テータス、ウィンド、ウ。

 ス、テータス、風、ウ。

 風、テータス、ウス。

 風のテータス、上に載ってる臼ってことなのか?


 まあ、そんなのどうでもいいか。



「風じゃないのだぜだぜか?」


「風であり、ステータスウィンドウでもあるのさうす」


「そうなのか……」


 よく分からん存在だなぁ。



「こいつに親父の情報が記載されているのだぜだぜか?」


「されてねぇぞうす」


「それなら、ステータスウィンドウではないのではありませんせんか?」


「今はされてねぇってだけで、させることはできるぜうす」


「そうなのか。なら、させてくれよ」


「ほう、ならば、テメェらの風を見せてもらおうかうす」


「風? どういうことだよ?」


「そいつは自分の頭で考えなうす」


「分かったよ……」



「風って、どういうことなのだろうか?」


「パネェザキをあおげば良いのだぜだぜか?」


「ぱね~っ!? ぱねぱねぱね~っ!? ぱねぱねぱ~ね~っ!? ぱねぱねぱねぱねっ!?」


「日本語!」


「気持ち悪くなりそうだから、やめてください、ぱね~」


「最初から、そう言え!」



「では、球状のものを操る能力とぺちんぺちんで、風を起こしてみましょうしょうか?」


「そうだな。やってみよう」



 やってみた。


「どうだ、風のテータス?」


「うーむ、そうだなうす…… 風の気配は感じたぜうす」


「じゃあ、俺の情報を見せてくれるか?」


「いや、まだだうす。まだ俺様の風は満足してねぇぜうす」


「なら、どうすれば良いのだろうか?」


「むっ、俺様の風が、いったんここを出た方が良いと言っているぜうす!」


「えっ、そうなのか?」


「ああ、この感じは間違いねぇぜうす!」


「では、いったん戻りましょうしょうか?」


「そうだな」


 俺たちは出口に向かった。



「あれ? 君も付いて来るの? いちょ~」


 後ろを見ると、風のテータスが俺たちに付いて来ていた。


 こいつ、飛んで移動できるのかよ。


 すごい冷蔵庫だな。


「君ではねぇぜうす! 俺様は『風のテータス』だうす!!」


「はいはい、分かったよ、いちょ~」


「それで、なんで付いて来るんだよ?」


「俺様の風が、その方が良いと言っているからだぜうす!」


「はぁ、そうなのか。なら、一緒に行こうか」


「ああ、そうしようぜうす」



 洞窟を出た。


「帰って来たかピピョーン」


「ただいま、マスターじいさんマスター」


「無事だったかピピョーン?」


「ああ、全員無事だよ」


「それは良かったピピョーン。むっ、そやつらはなんだピピョーン?」


 マスターじいさんマスターに説明した。



「ふむ、さすがは珍者ちんしゃ、珍妙なことばかり起こしてくれるピピョーン」


「珍妙なのか?」


「うむ、こんなステータスウィンドウが存在したという記録はないピピョーン」


「そうなのか。普通のはどんなものなんだ?」


「このようなものだピピョーン。ステータスオープンピピョーン」


 マスターじいさんマスターの前に、青い半透明のプレートが現れた。


 大きさは、縦横三〇センチくらい。

 宙に浮いている。


「へぇ、そんな形なんだ」


「うむ、そうだピピョーン。ステータスクローズピピョーン」


 プレートが消えた。


「そう言うと、出たり消えたりするのか?」


「うむ、その通りだピピョーン」



「マスターじいさんマスター、風って、何か分かるか?」


「そこは分からんなピピョーン」


「そうか……」


「いったいなんなのでしょうしょうかね?」


「しょ~しょしょしょっ! サッパリ分からんな!」


「とりあえず、町に戻って、調べてみようピピョーン」


「ああ、そうだな」


 俺たちは町に向かった。

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