第19話 顔に集る精霊

「君らは何かできるのか?」


「しょ~しょしょしょっ! 知らん!!」

「ちょ~さんも知らないよ、いちょ~」

「ワタクシもであります!」


「そうか……」


 本当に、何をしに出て来たのだろうか?



「そういえば、お前らは、なんて名前なんだぜだぜか?」


「しょ~しょしょしょっ! 名前などない!!」

「ちょ~さんもないよ、いちょ~」

「ワタクシもであります!」


「なら、何か考えてやろうだぜだぜ!」


「えっ? いるのか?」


「しょ~しょしょしょっ! せっかくだ、もらっておこう!!」

「そうだね、いちょ~」

「あった方が良いと思われるであります」


「じゃあ、何か考えるか」



「消化器の精霊は『ショーカ』胃腸の精霊は『イチョータ』労働の精霊は『ラガード』でどうだ?」


「しょ~しょしょしょっ! 良いぞ!!」

「ちょ~さんも良いよ、いちょ~」

「良いであります!」


「では、それで決定な」


 ついでに、俺たちも自己紹介をした。



「なんか眠くなってきただぜだぜ……」


「我もですだぜ……」

「私もですです……」


「俺もだ……」


「疲れたのであろうピピョーン。今日はもう休めピピョーン」


「ああ、そうさせてもらうよ」


「あっ、その前に、手に入れた回復アイテムを食べてみようだぜだぜ」


「あの黒い粒か。分かったよ」


 みんなで食べてみた。


 コメントに困る不味まずさだった。


 そのあと、風呂に入って、就寝した。



 次の日。


 目が覚めた。

 ああ~、よく寝たなぁ。


「親父殿、おはようですだぜ」

「おはようだぜだぜ」

「おはようございますます」


「ああ、おはよう」


「お、お父様、なんですですか、その顔は!?」


「ん? どうかしたのか?」


「イチョータたちがくっ付いているですだぜ!」


「くっくっくっ、面白いことになってるだぜだぜ!」


「ええっ!?」



 鏡で自分の顔を見てみた。


 ショーカが頭頂部に立っていた。

 イチョータが顎にくっ付いていて、変なヒゲっぽくなっていた。

 ラガードが眉間にくっ付いていて、変なつながりまゆ毛っぽくなっていた。


「なんだよ、これは!? おい、お前ら、起きろ!!」


「しょ~しょしょしょっ、おはよう、アル坊!」

「いちょ~っす、アルぴょん」

「おはようであります、アル殿!」


「ああ、おはよう! お前らは、何やってんだよ!? さっさと離れろ!!」


「しょ~しょしょしょっ! 断る! なぜかここは居心地が良いのだ!!」

「ちょ~さんも同じ理由で断るよ、いちょ~」

「ワタクシもであります!」


「こんな顔では外に行けないだろ!? さっさと離れろ!!」


「しょ~しょしょしょっ! 断る!!」

「断るよ、いちょ~」

「断るであります!」


「離れろ!」


 ショーカたちを無理矢理引きはがした。


 だが、すぐさまくっ付いてきた。


 今度はショーカが額の中央、イチョータが鼻の先端、ラガードが顎にいる。


 変な角の生やし、変な仮面を着けた、三段腹顎の変人だな。


「むむっ、ここもなかなか居心地が良いぞ! しょ~しょしょしょっ!」

「うん、ここも良いね、いちょ~」

「ここも素晴らしいであります!」


「人の顔にたかるな! 離れろっての!!」


「しょ~しょしょしょっ! 断固拒否だ!!」

「ちょ~さんもだよ、いちょ~」

「ワタクシも断固拒否させてもらうであります!」


「やかましい!」



 ショーカたちを無理矢理引きはがし、肩の上に乗せた。


「お前らはそこにいろ!」


「仕方ない、今日のところは、ここで妥協してやる! しょ~しょしょしょっ!」

「仕方ないなぁ、いちょ~」

「仕方なく妥協するであります」


「ああ、そうしてくれ! もちろん、明日以降もな!」


「それは約束できんな! しょ~しょしょしょっ!」

「明日は明日だね、いちょ~」

「契約はしないであります!」


「やめろっての!」



 着替えて、朝食を取った。


「お父様、今日は何をするのですですか?」


「またウトに行ってみるですだぜか?」


「そうだな。あそこで修行しようか」


「それじゃあ、行こうだぜだぜ!」



 ウトでハモノ狩りをした。


 あの変なハモノはいなかった。


 あいつらはなんだったのだろうか?



 三か月後。


「ウトのハモノにも、だいぶ慣れたな」


「ああ、そろそろ次の段階へ進んでも良いんじゃないだぜだぜか?」


「そうだなピピョーン。そろそろかもしれんなピピョーン」


「次は何をするのですですか?」


「あそこのハモノに勝てるなら、ステータスウィンドウを取りに行けるはずだピピョーン」


「おおっ、ついにか!」


「うむ、だが、そこは前言った通り、欲する者がひとりで行かなければならんピピョーン」


「我らも付いて行けないのですだぜか?」


「いや、ガギアキースセギトは問題ないと思うぞピピョーン」


「ちょ~さんたちはどうなの? いちょ~」


「そこは不明だピピョーン」


「そうなのか」



「まあ、とにかく、準備を念入りにしておけピピョーン」


「ああ、そうだな。じゃあ、回復アイテムを買いに行こうか」


「防具も新調した方が良いと思いますます」


「金属の球とかないのだぜだぜか?」


「確か店に売っているはずだピピョーン。買っておけピピョーン」


「じゃあ、買い物に行くか」


「お父様、また顔に付いてますますよ」


「離れろ! お前ら!!」


「しょ~しょしょしょっ! お断りだ!!」

「断るよ、いちょ~」

「お断わりであります!」


「うるさい! さっさと離れろ!!」


 ショーカたちを無理矢理引きはがし、肩の上に乗せた。


「さあ、買い物に行こう!」


 必要そうなものを買いそろえた。

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