第18話 精霊?

 帰宅した。


「では、キバウツワを調理させようピピョーン」


「ということは、それを食べるのか?」


「うむ、その通りだピピョーン」


 消火器にしか見えないのに、食べられるのかよ。


「では、食堂で待っておれピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 食堂の椅子に座って待っていると、メイド服を着たおばさんがやって来た。


 そして、俺の前に皿を置いた。


 そこには、小さな消火器のようなものが盛り付けられていた。


 キバウツワを丸ゆでにしたものだそうだ。


 うーん、シュールな光景だなぁ。



 ん?

 もうひと皿、出て来たぞ。


 ここにはトーストくらいの大きさの、人間の三段腹みたいなパンが盛り付けられているぞ。


「これはなんだ?」


「それは『ハラボウムギ』という植物で作ったパンだピピョーン。それも食べる必要があるピピョーン。一緒に食べるのだピピョーン」


「分かったよ」



「我らも食べた方が良いのですだぜか?」


「えっ? どうなんだ、マスターじいさんマスター?」


「そこは不明だピピョーン。好きにしろピピョーン」


「なら、食べてみたいだぜだぜ!」


「じゃあ、みんなで食べようか」


「そうですですね」



 では、いただきます。


 キバウツワを食べてみた。


 ニンジンみたいな味と食感だな。


 まあまあ美味しいかな。


 パンも食べてみた。


 うん、普通のパンだな。


 なかなか美味しい。


「うーん、なんか派手にうまいわけでもなく、不味まずいわけでもない、コメントに困る味だぜだぜ」


「無理にコメントしなくていいっての」



 完食した。


「ごちそうさま。これでどうなるんだ?」


「これで『回復アイテムは別腹なのよ!』と『ハラパンサンダーンバラガード』という特殊能力が身に付いたはずだピピョーン」


「なんだそれは!?」


「『回復アイテムは別腹なのよ!』は名前通り、回復アイテムを多く食べられるようになる能力だピピョーン。消化吸収の速度も速くなるピピョーン。限度はあるがなピピョーン」


「普通の食べ物には影響はないのか?」


「うむ、ないぞピピョーン」


「そうなのか。もうひとつは?」


「『ハラパンサンダーンバラガード』は、まあ簡単に言うと腹を守る能力だなピピョーン。攻撃に強くなったり、満腹時でも動けたりするぞピピョーン」


「そいつはすごいな」


「それと、このふたつの能力は、体を鍛えたり、エクスを吸収することで成長するぞピピョーン」


「そうなんだ」



「むっ、なんだそれはピピョーン?」


「えっ? なんのことだ?」


「アルヴェリュードの頭の上に、妙なものがおるぞピピョーン」


「しょ~しょしょしょっ! よくぞ、見破った!!」


 上から声が聞こえてきた。


「えっ!? 誰だよ!?」


「しょ~しょしょしょっ! とぉあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!!!」


 高さ一〇センチくらいの人間の手足が生えた消火器のようなもの、

 幅一〇センチくらいの銀杏いちょうの葉のような羽を持つちょうのようなもの、

 幅五センチくらいの人間の手足の生えた先程食べた人間の三段腹みたいなパンの小さいヤツ、


 このような姿をした連中が、食卓の上に着地した。


「な、なんだこいつらは!?」


「しょ~しょしょしょっ! しょ~ちゃんは『消化器』と『回復アイテムは別腹なのよ!』と『正義』の精霊である!!」


 消火器のようなヤツが、そう言った。


「消火器の精霊? 確かに見た目通りだな」


「しょ~しょしょしょっ! なんだか勘違いされているような気がするぞ! しょ~ちゃんは、体内にある食べた物を消化する器官の方だぞ!」


「ああ、そっちだったのか」


 火を消す方かと思った。



「いちょ~っす、ちょ~さんは『胃腸』と『回復アイテムは別腹なのよ!』と『怠惰とか休息とかそういう感じ』の精霊だよ」


 ちょうのようなヤツが、そう言った。


 確かに、その羽は銀杏いちょうっぽいな。


 この世界に銀杏いちょうってあるのだろうか?


「なんか勘違いされているような気がする、いちょ~。ちょ~さんは体内にある消化器官の胃と腸だからね」


「えっ? あ、ああ、分かったよ」


 そっちだったのか。


「ところで、怠惰とか休息とかそういう感じって、どういうことなんだ?」


「言葉通りだよ、いちょ~」


「そうか……」


 よく分からんなぁ。



「どうも、ワタクシは『ハラパンサンダーンバラガード』と『労働』の精霊であります!」


「そうなのか。見た目通りだな」


「お褒めに預かり光栄であります!」


「あ、ああ……」


 褒めたのかなぁ?



「それで、君らはなんなの?」


「しょ~しょしょしょっ! だから、精霊だと言っただろ!!」


「そうだよ、いちょ~」


「精霊って、何?」


「いろいろなものに宿る魂のようなものであります」


「そうなのか」



「それで、その精霊が、なんでいきなり出て来たんだよ?」


「しょ~しょしょしょっ! 知らん! なぜかいきなり出て来てしまったのだ!!」


「ちょ~さんもだよ、いちょ~」

「ワタクシもであります!」


「そうだったのか……」


「お父様が特殊能力を身に付けたから現れた、ということではありませんせんか?」


「そうなるのかな?」


「いや、今までこんなものが出て来たという話は聞いたことがないピピョーン。これはアルヴェリュードが特殊な珍者ちんしゃであるから、出て来た可能性が高いピピョーン」


「俺って、特殊だったのか?」


「ガギアキースセギトたちを人型にしておるじゃないかピピョーン。特殊と言わざるを得ないピピョーン」


「そうなのか……」


 なんか微妙だなぁ……

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