第15話 下に伸びている……

 三か月くらい町の周囲のハモノと戦い続けた。


「かなり成長したようだなピピョーン」


「ああ、そうだな。戦いにも、だいぶ慣れたよ」


「でも、最近は伸び悩んでいる気もするだぜだぜ」


「それは同じハモノとばかり戦っておるからだなピピョーン」


「一定以上は強くならないのか?」


「うむ、その通りだピピョーン」


 レベルが上がると、経験値が入らなくなるタイプのゲームみたいだな。



「なら、もう一段階強いハモノと戦った方が良いのですだぜか?」


「うむ、そうだなピピョーン。そろそろ次に移ろうピピョーン。まあ、とりあえず、今日は休めピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 夕食を取り、風呂に入った。


 そして、ベッドに入った。


「さて、寝るとするか」


「お父様、質問がありますます」


「なんだ、エルゥ?」


「なぜお父様は、珍者ちんしゃをしているのですですか?」


「えっ? それは…… なんでだろう? 珍者ちんしゃだと言われて、ここに連れて来られて、なんかやってるだけって感じだな」


「親父~、主体性なさすぎだぜだぜ」


「まったくですだぜ」


「うるさいな! まだ子供なんだし、仕方ない部分もあるだろ! それに、他にやりたいことがあるわけでもないしな!」


珍者ちんしゃって、やってて良いことあるのだぜだぜか?」


「どうなんだろう? 本では、かなり高額な報酬をもらえていたけどな」


「大金がもらえるなら、やる価値はあるですだぜ」


「ああ、とりあえず、このまま続けようだぜだぜ」


「そうだな。さて、もう寝るとしようか」


「おやすみですだぜ」

「おやすみだぜだぜ」

「おやすみなさいさい」


「みんな、おやすみ」



 次の日。


「おはようピピョーン」


「おはよう、マスターじいさんマスター。今日は何をするんだ?」


「今日から、回復アイテムを大量に飲食する訓練を開始するピピョーン」


「おっ、とうとう始めるのか。それで、何をするんだ?」


「まずは『キバウツワ』という植物を手に入れるのだピピョーン」


「それをどうするんだ?」


「それは手に入れてから教えようピピョーン。まずは採取しにゆくぞピピョーン」


「分かったよ。それで、どこにあるんだ?」


「運が良いと、店に売っておるピピョーン。探しにゆくぞピピョーン」


「分かったよ」



 店を探してみた。


 運が悪かった。


「どうする、マスターじいさんマスター?」


「仕方ないピピョーン。採取しにゆこうかピピョーン。町の外に行くことになるから、戦闘の準備をするぞピピョーン」


「分かったよ」



 準備をして、町の外に出た。


 そして、しばらく歩いて行くと、洞窟のような穴が開いている標高十数メートルくらいの砂山があった。


 なぜかその穴の横に、木製の立て看板がある。


「ここだピピョーン」 


「この中に、キバウツワがあるのか?」


「うむ、その通りだピピョーン」


「親父、そこの看板には、なんて書いてあるんだぜだぜか?」


「ん? ええと『塔、それは高くそびえ立つ建造物。なら、これは下に伸びている建造物だから、塔の反対である【ウト】だね。こ、これは激ウマギャグじゃないか!!』だと!? なんだそれは!? 別にウマくないだろ!?」


「まったくだぜだぜ! くだらなさすぎるだぜだぜ!」


「マスターじいさんマスター、これはなんなんだ!?」


「不明だピピョーン。そんなもの気にしなくて良いぞピピョーン。さあ、ゆくぞピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 中に入った。


「意外と明るいな。なんで天井が所々白く光っているんだ?」


「なぜか白く光る石が埋まっておるからだピピョーン」


「下り階段がありますますね。ここは誰かが造ったのですですか?」


「そこは不明だピピョーン」


「そうなのか」


 よく分からん場所だなぁ。



「では、ゆこうかピピョーン」


「ああ、そうだな」



「デカい螺旋らせん階段だなぁ」


「落ちないように気を付けるのだぞピピョーン」


「分かっているよ」



 階段を下りた。


 そこは、灰色のアスファルトっぽいもので造られた広い空間だった。


 ここも天井が所々白く光っていて、内部はとても明るい。


「ここのどこかにキバウツワが生えておるピピョーン」


「ここの地面、すごく硬いけど、本当に生えることができるのか?」


「できるのだピピョーン」


「そうなのか。すごい植物なんだな」



「ここ迷路になっているのですだぜか?」


「うむ、その通りだピピョーン。さらに、草原より強いハモノもおるピピョーン。気を付けるのだぞピピョーン」


「ああ、分かったよ」


「では、ゆくぞピピョーン」



 ん?

 通路にカラスみたいな黒い鳥が転がっているぞ。


 なぜか頭に、白いウサギ耳の付いたカチューシャのようなものを付けている。


「むっ、あれはハモノだピピョーン」


 マスターじいさんマスターがカラスみたいな黒い鳥を指差し、そう言った。


「あれがここのハモノなのか」


「うむ、あれは『ウトウト』と呼ばれておるピピョーン」


 『ウト』にいる『烏兎うと』だから『ウトウト』なのか?


「寝ておるうちに、倒してしまおうピピョーン」


「ああ、そうだな」


「なら、あいつは俺の『球状のものを操る能力』で倒してやるだぜだぜ」


「球状のものなんて、持っていたのか?」


「お父様、そこに球状の石が落ちていますます」


 地面に、拳くらいの大きさの丸い石が落ちていた。


 なんと都合が良いんだ!

 素晴らしいな!!



「それじゃあ、いくだぜだぜ!」


 石が高速で飛んで行き、ウトウトの頭部に直撃した。


 おっ、エクスが入って来たみたいだ。


 どうやら倒したようだな。

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