第11話 回復アイテム

「では、次は回復アイテムを買いに行くぞピピョーン」


「分かったよ」



「ここが回復アイテムの売っている店だピピョーン」


 そこには、巨大な茶色いダンボール箱のようなものがあった。


「ここも異質だな」


「そうですですね」


「なんでこんなデザインなんだ?」


「不明だピピョーン。さあ、入るぞピピョーン」



 中に入った。


 日本の食料品売り場みたいな場所だな。


「ここは食料品も売っている店なのか?」


「ここにあるものは、回復アイテムにも、料理にも使えるのだピピョーン」


「どういうことだ?」


「そこの棚を見ろピピョーン」


 そこには『回復アイテムのもと』と書かれたラベルが貼ってある透明な小瓶が並んでいた。


 中には白い粉末が入っている。


「その粉末を混ぜて作った料理が、回復アイテムになるのだピピョーン」


「なんでそうなるんだ?」


「不明だピピョーン」


 訳が分からんなぁ。


「そんな面倒なことしないで、あの粉を直接食えば良いんじゃないだぜだぜか?」


「うむ、その方が早いですだぜ」


「それでは回復しないのだピピョーン」


「それは、なぜですですか?」


「そこも不明だピピョーン」


 訳が分からなさすぎる……



「じゃあ、あれを買って、何か作ろうか」


「いや、今回は出来合いのものを買っていこうピピョーン」


「そういうのもあるのか」


「うむ、少々値が張るがなピピョーン。では、行こうかピピョーン」



 缶ジュースのようなものと、飲むゼリーみたいなものが、大量に並んでいるコーナーにやって来た。


「回復アイテム初心者には、こういった飲み物タイプが良かろうピピョーン」


「そうなんだ。なら、ちょっと見てみるか」


 『ピョーピョン青春味』

 『ピョーピョンセイ春味』

 『ピョーピョン灰色の青春味』


 『ピョーピョン青春味 回復アイテムのもと入り』

 『ピョーピョンセイ春味 回復アイテムのもと入り』

 『ピョーピョン灰色の青春味 回復アイテムのもと入り』


 と書いてある、内容量三五〇ミリリットルくらいの缶が並んでいる。


「ピョーピョン青春味? どういうこと?」


「ピョーピョンというのは商品名だピピョーン」


「そうなのか。青春味って、どんな味なんだ?」


「甘酸っぱい感じだなピピョーン」


 確かに青春っぽいな。


「セイがカタカナのものは甘い、灰色の青春味は苦いぞピピョーン」


「そうなんだ」


 セイ春味の『セイ』は、なんなのだろう?


 まあ、どうでもいいか。



「『回復アイテムのもと入り』と書いてあるのが回復アイテムなのか?」


「そうだピピョーン」


 ピョーピョン青春味が二百ジィアカで、もと入りのピョーピョン青春味が三百ジィアカか。


 確かに高くなっているな。



「親父『ピョーピョン赤色の青春味』っていうのもあるだぜだぜ」


 赤色!?

 何があったんだ!?


「それは少し辛くて、アルヴェリュードには飲みにくいと思うぞピピョーン」


「そうなのか」


 赤くて辛い青春……


 なんなのだろうか?


 まあ、いいか。



「親父殿、そこに大きいのがあるですだぜ!」


 そこには、二リットルくらいの缶が置いてあった。


 表面には『ピョーピョン人生味』と書いてある。


「本当だ。人生味って、どんな味なんだ?」


「さまざまな味のする不思議なものだったなピピョーン」


「そうなのか」


「親父も飲んでみるだぜだぜか?」


「こんなに飲めないっての」


「そこに小さいものがありますますよ。そちらにしますますか?」


「えっ? うーん、他のものも見てから考えよう」



「『ピョーピョン鼻孔内の非常食味』というものがありますますよ」


 なんじゃそりゃぁっ!?

 もしかして、鼻クソのことなのか!?


「どんな味がするのでしょうしょうか?」


「塩辛かったぞピピョーン」


「そうなのですですか」


 えええええええええええええええっ!?

 飲んだことあるのかよ、マスターじいさんマスター!?

 チャレンジャーだな!?



「大量にありすぎて、どれにすればいいか迷ってしまうな」


「そうですですね」


「マスターじいさんマスター、オススメはあるか?」


「オススメかピピョーン…… この『ピョーピョンぴピョぴょピョぴょ太郎のおばあさんが大好きな味』というのが美味しかったぞピピョーン」


「それって、ぴピョぴょピョぴょ味なのか?」


「いや、味は『ビョびゃビョびゃビョ』に近かったぞピピョーン」


 ビョびゃビョびゃビョ!?


「なんだそれは!?」


「黄色い果物だピピョーン。とても甘いぞピピョーン」


「そうなのか。なら、それにするか。いくつ買おうか?」


「とりあえず、三本で良いだろうピピョーン」


「分かったよ」


 缶を手に取った。


「結構かさばるなぁ」


 三五〇ミリリットルくらいの缶が三本だからな。


「これはカバンも必要ですですね」


「それなら家にあるピピョーン。あとで、渡そうピピョーン」


「そうなのか。ありがとう、マスターじいさんマスター」



「回復アイテム上級者は、どんなものを食べるんだぜだぜか?」


「せっかくだピピョーン。ちょっと見ていこうかピピョーン」



「これを使うこともあるぞピピョーン」


 マスターじいさんマスターが、数キロくらいありそうな牛肉っぽい肉の塊を指差した。


「えっ!? それを戦闘中に完食するのか!?」


「そうだピピョーン」


 ええっ!?

 回復アイテム上級者すごすぎだろ!?


 本当に人間なのかよ!?

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