第10話 防御力一丁?

「やることってなんだ?」


「防具と回復アイテムを買っておかねばならんピピョーン」


「ああ、それか」


「これから買いに行こうピピョーン。準備してくるから、待っておれピピョーン」


「分かったよ」


 ん?

 五歳児でも装備できる子供用の防具ってあるのだろうか?


 まあ、それは行ってみれば分かることか。


 さて、俺も準備をしようか。



「準備ができたピピョーン。ゆくぞピピョーン」


「分かったよ」


 家を出た。



 町の中を歩いている。


 西洋風のキレイな町並みだな。


 人通りも多いし、みんな健康そうだ。


 栄えている町なのかな?


 そういえば、この町のことを全然知らないな。


 あとで、調べておくか。



「ここに防具が売っておるピピョーン」


 そこには、巨大な緑色のドラム缶のようなものがあった。


 中層ビルくらいありそうな大きさだな。


「この建物だけ異質ですですね」


「ああ、なんでここだけ周りと違うんだ?」


「それは知らんピピョーン。店長の趣味なんじゃないかピピョーン?」


「そうなのか」


「さあ、入るぞピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 中に入った。


 なんか日本のデカい服屋みたいな感じだな。


 見える範囲に、盾やよろいはない。


「この店は、普通の服も売っているのか?」


「そういえば、防具のことを教えておらんかったなピピョーン。防具というのは、こういった衣類に『防具加工』を施して作るのだピピョーン」


「えっ? 防具って、珍者ちんしゃイデザテレオーズが身に着けていたようなものじゃないのか?」


「そういうものもあるピピョーン。だが、今のアルヴェリュードには重くて着れんだろうピピョーン。ここにあるものの方が良いぞピピョーン」


「まあ、確かにそうだな」


「さあ、好きなものを選べピピョーン」


「ああ、分かったよ」



「そういえば、戦闘中、ガギアキースセギトたちはどうするんだピピョーン?」


「どうしよう? 胸ポケットにでも入っているか?」


「ああ、それでいいだぜだぜ」


「なら、そういう服を探そうか」



「大量にあるですだぜ」


「それに色もたくさんありますますね」


「ああ、そうだな。どれにしようかな? 戦闘をしていたら汚れるから、黒い服の方が良いかな?」


「良いと思うぞピピョーン」


「じゃあ、それを探すか」



 おっ、あった。


 両胸にポケットのある長袖のシャツ、ロングパンツを手に取った。


 お値段は、両方四千ジィアカみたいだな。


「これでいいかな」


「では、レジに行こうかピピョーン」



 レジの前に来た。


 筋骨隆々、白ハチマキ、黒Tシャツ姿の職人っぽいおっさんがいる。


「らっしゃっせぇっビョビョビョッ!」


 職人っぽいおっさんが、そう言った。


 ビョビョビョッ?


「親父、この二枚に『半防御力』を一丁ずつ頼むピピョーン」


「へい、半防御力一丁ずつビョビョビョッ! 少々お待ちをビョビョビョッ!!」


 職人っぽいおっさんが、服を持って奥に向かって行った。


 ビョビョビョッって、何?

 口癖なのか?


 まあ、いいか。



「半防御力って、なんだ?」


「先程言った防具加工の程度のことだピピョーン。半防御力の他に『防御力並盛り』『防御力大盛り』『防御力特盛り』『防御力超特盛り』があるピピョーン」


「そ、そうなのか……」


 なんじゃそりゃぁっ!?

 ラーメンやライスか!?


「半防御力は、防御能力が一番低いのですですか?」


「そうだピピョーン」


「どうせなら、もっと良いのにしろだぜだぜ!」


「金が足らんピピョーン」


「いくらするんだ?」


「そこの看板に書いてあるピピョーン」


 半防御力は一丁二千ジィアカ。

 並盛りが二万ジィアカ。

 大盛りが二十万ジィアカ。

 特盛りが二百万ジィアカ。

 超特盛りが二千万ジィアカのようだ。


「これは値段が高いほど、防御能力が上がるんだよな?」


「そうだピピョーン」


「この一丁って、どういうことなんだ? 二丁や三丁にもできるのか?」


「できるピピョーン。当然その分防御能力も上がるピピョーン。値段も上がるがなピピョーン」


「そうなのか」


 妙なシステムだなぁ。



「へい、半一丁ずつ、お待ちビョビョビョッ!」


 職人っぽいおっさんが、レジに服を置いた。


「お会計は、一万二千ジィアカになりやすビョビョビョッ!」


 マスターじいさんマスターが、金貨と銀貨二枚をレジに置いた。


 あれがジィアカなのか。


「毎度ありビョビョビョッ! またどうぞビョビョビョッ!!」



 服を受け取った。


「見た目に変化はないな」


「いや、あるぞピピョーン。裏側を見てみろピピョーン」


 裏に『半』という白い字が書いてあった。


 高さ十数センチくらいある、結構大きい文字だな。


「これを書くと、防御能力も上がるのか?」


「その通りだピピョーン」


 ええ……

 意味が分からなさすぎるぞ……


「本当に上がっているのか?」


「上がっているぞピピョーン」


 疑わしすぎる……



「では、次は靴だピピョーン」


「ああ、確かにそれもいるな。分かったよ」


「靴屋は上の階にあるピピョーン。行こうピピョーン」



 二階に来た。


 そこには、盾やよろいが並んでいた。


 ここは防具屋って感じだな。


「もうひとつ上だピピョーン。行くぞピピョーン」


「ああ、分かったよ」



 三階に来た。


 そこには、さまざまな靴が並んでいた。


「さあ、好きなのを選べピピョーン」


「靴にも防具加工ができるのか?」


「できるぞピピョーン」


「そうなんだ」


 半防御力一丁の黒いブーツを買ってもらった。


 これも裏に『半』と書いてあるな。


 こんなので本当に大丈夫なのだろうか?

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