第5話 ガギアキースセギト

 マスターじいさんマスターとともに、庭を歩いている。


 天気が良くて、気持ちが良いな。


 ん?

 わらのようなものを束ねて作った、等身大人形が五体置いてあるぞ。


 あれは的かな?


「では、ガギアキースセギトの説明をしようピピョーン」


「ああ、頼むよ」


「ガギアキースセギトには、真ん中の『ガギアキースセギトロッドソード』と、右の『ガギアキースセギトスフィア・アルゥ』と、左の『ガギアキースセギトスフィア・エルゥ』があるピピョーン」


「そんな名前が付いていたのか」


「なら、今後、我のことを『ロッドソード』と呼ぶですだぜ」

「俺は『アルゥ』だぜだぜ」

「私は『エルゥ』ですですね」


「分かったよ」


 ロッドソード……

 棒で剣なのか……

 まあ、確かにそうかもな。


 アルゥとエルゥは、右と左なのだろうな。



「記録によると、ガギアキースセギトロッドソードには、四つの特殊能力があるそうだピピョーン」


「そうなのか。どんなものなんだ?」


「ひとつ目は『ロッドソード・ぺしぺし』だピピョーン」


「ぺしぺし!? なんだそれは!?」


「対象を縦に斬り裂く能力だピピョーン」


「そうなのか……」


 名前の割には強そうだな……



「ふたつ目は『ロッドソード・ぺちんぺちん』だピピョーン」


 ぺちんぺちん!?


「これは対象を横に斬り裂く能力だピピョーン。しかも、右と左から一回ずつ斬り付けるぞピピョーン」


「それは強そうだな」


 名前はアレだけどな。



「三つ目は『ロッドソード・ぷすぷす』だピピョーン」


 ぷすぷす!?

 今度は突き技か!?


「これに関しては、何が起こるか分からないそうだピピョーン」


「えっ!? 記録されてないのか!?」


「いや、あるぞピピョーン。対象となったものが『破裂する』『叫ぶ』『放心状態になる』『激怒して襲ってくる』『突然死ぬ』といったことが起こったそうだピピョーン」


「そうなのか。なんでそんなことが起こるんだ?」


「不明だピピョーン」


「そうか……」



「四つ目は『棒状のものを操る能力』だピピョーン。これは名前通りのものだなピピョーン」


「へぇ、そんなのもあるのか」



「すごいじゃないだぜだぜか、ロッドソード! 俺は何ができるんだぜだぜ!?」


「ガギアキースセギトスフィアは、両方とも『球状のものを操る能力』が使えるピピョーン」


「それも名前通りのものなのか?」


「そうだピピョーン」


「他には何があるんだぜだぜ!?」


「あと、ひとつあるが、今は使えないピピョーン」


「そうなのだぜだぜか。いつ使えるようになるんだぜだぜ?」


「アルヴェリュードが大人になった時だピピョーン」


「親父、早く育てだぜだぜ」


「はいはい、善処するよ」



「それらは、どうやって使うんだ?」


「ぺしぺし、ぺちんぺちん、ぷすぷすは、ロッドソードが技名を叫ぶと使用できるピピョーン」


「それは簡単ですだぜ」


「ただ、人前で使用すると、アルヴェリュードが周囲の者たちから『何言ってんだ、こいつ!?』という目で見られる可能性があるピピョーン」


 なんじゃそりゃぁっ!?

 ひどいデメリットだな!?


「そのくらい問題ないですだぜ」


「いや、あるだろ!?」


「ないですだぜ。積極的に使おうですだぜ」


「少しは気にしてくれよ!?」



「それから、その三つはアルヴェリュードにも当たるピピョーン。手足を前に出した状態で使うなピピョーン」


「分かったよ……」


 恐ろしいなぁ……


「ロッドソード、気を付けてくれよ」


「了解ですだぜ」



「棒状のものを操る能力と、球状のものを操る能力は、アルヴェリュードの視界の中にそれらがある状態で、操りたいと思えば操れるピピョーン」


「それも簡単ですですね」


「操ったあとは、アルヴェリュードの視界から外れても操れるピピョーン」


「そうなんだ」


 便利だな。



「では、実際に能力を使用してみようピピョーン。そこの人形をぺしぺしを使ってみろピピョーン」


「分かったですだぜ! ロッドソード・ぺしぺしですだぜ!!」


 ロッドソードが叫んだ直後、俺の前で重量のある見えない何かが振り下ろされたような気がした。


「今のがロッドソード・ぺしぺしか…… なんか威力ありそうだな」


「まったくですだぜ」


「だが、当たらなければ意味がないぞピピョーン」


「そうだな」


 人形には当たってないからな。


「これってどのくらいの範囲を攻撃できるんだ?」


「ぺしぺしとぺちんぺちんは、使用者の親が剣を振るった時と同じくらいだそうだピピョーン」


「俺が剣をか…… なら、かなり近付かないと当たらないな」


「親父殿、やってみるですだぜ」


「ああ、分かったよ」



 俺はわら人形に近付いた。


「では、いくですだぜ! 『ロッドソード・ぺしぺし』ですだぜ!!」


 わら人形の腕が斬り落とされた。


「おおっ、結構太い腕があっさり斬れたな!」


「素晴らしい威力ですだぜ!」


「うむ、見事だピピョーン」



「次はロッドソード・ぺちんぺちんを使ってみろピピョーン」


「分かったですだぜ! ロッドソード・ぺちんぺちんですだぜ!!」


 わら人形の両足が二回横に斬り付けられた。


「また切断されたな。これもすごい威力だな」


「まったくですだぜ」


「うむ、よくやったピピョーン」



「では、最後にロッドソード・ぷすぷすを使ってみようピピョーン。これだけは射程が十数メートルほどあるそうだピピョーン。離れた場所から使ってみろピピョーン」


「分かったよ」


 なんでこれだけ?


 まあ、いいか。



 俺はわら人形から離れた。


「では、いくですだぜ! ロッドソード・ぷすぷすですだぜ!!」


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


 突然、わら人形の方から叫び声が聞こえてきた。


 そして、わら人形が内側から破裂した。


 えええええええええええええええっ!?


 なんじゃありゃぁぁぁっ!?

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