第4話 高度で危険な特殊能力
生まれてから、四年くらい経過した。
「親父殿、親父殿、トイレに行きたいですだぜ!」
朝起きたら、下半身の方から聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「そうか。トイレか。俺も行きたいぞ。 ……ん? 誰だ?」
周囲を見回してみたが、誰もいない。
いつも通りの俺の部屋だ。
えっ!?
どういうこと!?
ま、まさか幽霊とか、お化けとかなのか!?
「親父、さっさとトイレに行こうだぜだぜ!」
「そうですですよ、お父様! 漏れてしまいますますよ!!」
また聞き覚えのない声が聞こえてきた。
しかも、ふたり分。
「誰なんだ!? どこにいるんだよ!?」
「いつものところにいるですだぜ!」
「はぁっ!? どこだよ!?」
「股のところに決まってんだろだぜだぜ!」
「私たちは、いつもそこにいるでしょうしょう!」
「えっ!? 股!? ということは、アソコがしゃべっているのか!?」
「話はあとにしろだぜだぜ! 今はトイレに行けだぜだぜ!!」
「あ、ああ、そうだな……」
ふぅ、スッキリした。
「あ~、よく出たですだぜ!」
「お父様、キチンと手を洗いましょうしょう」
「あ、ああ、分かっているよ……」
手を洗った。
ついでに、顔も洗った。
「親父殿、次は飯でも食おうですだぜ」
「いや、その前に話の続きをしよう。お前らはなんなんだ?」
「何って、真ん中の長いのですだぜ」
「右側だぜだぜ」
「左側ですです」
「なんでしゃべってんだよ?」
「知らないですだぜ」
「いきなりしゃべれるようになっただぜだぜ」
「どうやってしゃべっているんだよ?」
「詳しくは分かりませんせん。声を出したいと思うと出ますます」
「なんなんだよ、それ……」
訳が分からなさすぎる……
「親父殿が
「なんでそんなこと知ってるんだよ?」
「親父の一部だからだろだぜだぜ」
「俺の記憶を読めるのか?」
「多分そうですです。すごく昔のことも、なんとなく分かりますます」
「そうなのか」
前世のことまで知ってそうだな。
「なんで俺を父親扱いするんだ?」
「なんかそんな気がするからだぜだぜ」
「そうなのか」
まあ、そこはどうでもいいか。
息子と表現することもあるしな。
「なんで語尾に『だぜだぜ』とかを付けるんだ?」
「なんかそう言ってしまうですだぜ」
「細かいことは気にするなだぜだぜ」
「分かったよ」
「アルヴェリュード、起きておったかピピョーン。おはようピピョーン」
マスターじいさんマスターが、洗面所にやって来た。
「ああ、おはよう」
「おはようですだぜ」
「おはようだぜだぜ」
「おはようございますます」
「むっ、この声はなんだピピョーン?」
「えっ、お前らの声って、他人にも聞こえるのか!?」
「そのようですだぜ」
「今、判明しましたしたね」
「そうなのか。不用意にしゃべらないでくれ」
「その方が良さそうですですね」
「そんなのつまらなさすぎるだぜだぜ!」
「わがまま言わないでくれよ」
「なら、信用できそうなヤツには、紹介してくれだぜだぜ!」
「前向きに検討させていただきます」
「こ、これはまさか『ガギアキースセギト』かピピョーン!?」
「が、がぎあ? なんだそれは?」
「『ガギアキースセギト』
「危険!? こいつらが!? どこが危険なんだよ!?」
「制御に失敗すると、入れ替わってしまうところだピピョーン」
「入れ替わる!? それって人格がか!?」
「その通りだピピョーン」
「な、なんだって!? そうなってしまったら、どうなるんだよ!?」
「入れ替わった者が、アルヴェリュードの体を動かすことになるピピョーン」
ええええええええっ!!!!!
「大きくなった時に入れ替わってしまったら、非常にマズいことになるであろうピピョーン……」
ああ、確かに、アレがピークの年齢で入れ替わったら、ヤバいだろうなぁ。
ここって警察みたいな組織はあるのだろうか?
「まだ修行中だというのに、もう身に付いてしまうとはピピョーン……」
「どうすれば入れ替わらないんだ!?」
「とにかく、気をしっかり持つことだピピョーン。この体は自分のものだと、しっかりと認識しておけピピョーン」
「ああ、分かったよ」
この体は俺のもの……
この体は俺のもの……
よし!!
「別に入れ替わろうとは思わないですだぜ」
「はい、人間はいろいろと面倒ですですからね」
「これは制御できているということなのだろうか?」
「そのようだピピョーン」
「俺はちょっとで良いから、外を自由に走ってみたい気がするだぜだぜ」
「こいつはちょっと危ないのか?」
「この程度なら問題ないはずだピピョーン」
「そうか。それは良かった」
「さっきこの能力を高度だとも言ったよな? それはどういうことなんだ?」
「使いこなすことができれば、とても強力だからだピピョーン」
「どんなことができるんだ?」
「そやつらも特殊能力が使えるのだピピョーン。単純に人手が増えると思えば良いピピョーン」
「手なんてないですだぜ」
「ただ、そう表現しただけだピピョーン。細かいことは気にするなピピョーン」
「了解ですだぜ」
「その特殊能力って、なんなんだ?」
「それは飯を食ってからにしようピピョーン」
「それもそうだな」
「うむ、腹が減ったですだぜ」
「ああ、減っただぜだぜ」
「そうですですね」
「えっ? お前らも腹が減るのか? 腹なんてないだろ?」
「どうやら親父の感覚が伝わってきているみたいだぜだぜ」
「お父様の見ているものが、私にも見えますますからね」
「我もですだぜ」
「俺もだぜだぜ」
「そうだったのか」
「さあ、アルヴェリュード、食堂に行くぞピピョーン」
「ああ、分かったよ」
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