第3話 ここは学校?

 歩けるようになった。


 まだ舌足らずな感じだが、しゃべれるようにもなった。


 よし、この部屋を脱出して、情報収集をしよう!


 いざ、出陣!!!


 と思った直後、突然、俺を連れ出した仙人みたいなじいさんが部屋に入って来た。


「おはよう、アルヴェリュードよピピョーン」


 仙人みたいなじいさんが、そう言った。


 またピピョーンと言ったな。


 あれは、なんなのだろうか?


「おはよ~」


 とりあえず、子供っぽく挨拶を返した。


「うむ、挨拶ができて偉いぞピピョーン」


 またまたピピョーンと言ったな。


 あれは口癖なのだろうか?


 まあ、いいか、放っておこう。



 さて、せっかくしゃべれるようになったんだし、いろいろと聞いてみるか。


 もちろん、子供のフリをしてな!


「おじ~ちゃん、だぁれ?」


「わしかピピョーン? わしのことは『マスターじいさんマスター』と呼べピピョーン」


 マスターじいさんマスター!?


 どういうことだ!?


 じいさんを極めた師匠みたいな感じなのか!?


 訳が分からなさすぎるぞ!?


 まあ、いいか!

 質問を続けよう!


「なにかよう?」


「アルヴェリュードを、立派な珍者ちんしゃにするために来たのだピピョーン」


 ということは、この人は俺を教育するために、ここに連れてきたのか?


 なら、ここは珍者ちんしゃの学校なのだろうか?


「ちんしゃって、なぁに?」


「本に書いてあったであろうピピョーン?」


 本?

 『珍者ちんしゃイデザテレオーズの冒険』のことか?


 あんなので分かるわけないだろ!?


「よくわかんなぁい」


「そうかピピョーン。では、説明しようかピピョーン」


 おおっ、やったぞ!


 さあ、教えてくれ!

 珍者ちんしゃとは、なんなんだ!?


珍者ちんしゃとは、副業の中のひとつなのだピピョーン」


「ふくぎょう?」


「うむ、副業とは、神にそれをやった方が良いと思われているもののことだピピョーン。神から押し付けられた役割と思っている者もいるようだがなピピョーン」


 なんだそれは!?


「職業や本業と呼ばないのは、そこは自由に決めて良いという神の意思なのだピピョーン」


 そ、そうなのか……


 要するに、運命みたいなものなのだろうか?

 それとも、才能なのかな?


 よく分からないなぁ。



「ちんしゃは、なにをやるの?」


「なんかすごいことが起きた時に、なんとかするのだピピョーン!」


 な、なんだと!?

 本に書いてある通りだっただと!?


「なんかすごいことって、なぁに?」


「悪いものが現れたり、誰かが困ったりすることだピピョーン」


 ものすごく曖昧だなぁ。


 珍者ちんしゃは、勇者のような便利屋のような感じの人なのかな?



「分かったかピピョーン?」


「うん、なんとなくわかったよ」


「そうかそうか、偉いぞピピョーン。では、次は外に遊びに行くぞピピョーン!」


 えっ!?

 なんでだ!?


「さあ、付いて来るのだピピョーン!!」


 マスターじいさんマスターが部屋を出て行った。


 まあ、いい。

 とりあえず、付いて行こう。



 庭にやって来た。


 うわぁ、広いところだなぁ。


「では、まずはかけっこだピピョーン! ゆくぞピピョーン!!」


 マスターじいさんマスターとかけっこをしたり、木に登ったりして遊んだ。


 これは遊びっぽい訓練なのかな?


 それにしても、このじいさん、身体能力高いな。


 見た目通り、仙人なのかな?



 生まれてから、三年くらい経過した。


 毎日よく遊んで、よく食べて、よく寝ているせいか、成長しまくったな。


「おはよう、アルヴェリュードよピピョーン」


 マスターじいさんマスターが、俺の部屋にやって来た。


「おはよう、マスターじいさんマスター。今日は何をするんだ?」


「今日は雨だし、座学にするかピピョーン。珍者ちんしゃとして、重要なことを教えてやろうピピョーン」


「重要なこと? それはなんなんだ?」


「この世界には『ハモノ』というものがおるのだピピョーン」


 葉物? 刃物? はもの? 端物? 羽物? 覇者?


「なんだそれは?」


「人を襲うものだピピョーン」


 それって、魔物か?


 なんで『魔』が『ハ』になっているんだ?


 訳が分からないな。


珍者ちんしゃであるなら、ハモノと戦う機会が必ず来るピピョーン」


「じゃあ、今日は戦い方を教えてくれるのか?」


「そうだピピョーン」


 とうとうそこを学ぶ日が来たか……



「ハモノと戦う時に、最も重要なことはなんだと思うピピョーン?」


「えっ? 日頃の訓練とか、武器とか防具とかかな?」


「重要ではあるが違うピピョーン」


「なら、勇気とか?」


「それも、重要ではあるが違うピピョーン」


「なら、なんなんだ?」


「それは回復アイテムだピピョーン」


「回復アイテム? ナニソレ?」


「飲食すると、たちどころに傷が治る道具だピピョーン」


「そうなのか。そんなのがあるんだ」


 すごくゲームっぽいなぁ。


 ここって、リミバカオス・ゼビリピードではないゲームの世界なのか?



「じゃあ、その回復アイテムをたくさん持っていれば良いのか?」


「そんなに単純な話ではないぞピピョーン」


「ああ、持てる量には限度があるからな。それに、武器防具もいるだろうしな」


「それもあるが、回復アイテムを飲食できるかという問題もあるピピョーン」


「ああ、戦闘中は動き回るだろうからな」


「そうだピピョーン。それと、回復アイテムは、量の多いものほど効果が高いピピョーン。それを戦闘中に飲食できるか、満腹でも動くことができるかという問題もあるピピョーン」


「なるほど、そういうものもあるのか」


 満腹で戦闘したら、腹が痛くなりそうだからな。


 最悪、嘔吐おうとしてしまうかもしれない。


「その問題をどう解決するんだ?」


「もう少し大きくなったら、訓練を開始するピピョーン。その時、話そうピピョーン」


「分かったよ」


 要するに、早食い、大食い、胃腸の丈夫さが戦いの肝なのか。


 妙な戦いだなぁ。



「それから、もうひとつ重要なことがあるピピョーン」


「それはなんだ?」


「ハモノも回復アイテムを飲食するのだピピョーン」


 そんなことしてくるのか?


 面倒だな。


「それをいかに妨害するかも重要だピピョーン。そして、珍者ちんしゃには、回復アイテムの飲食を妨害する特殊能力があるピピョーン」


「特殊能力? なんだそれは?」


「神から与えられた力だと言われているピピョーン」


 ゲームの魔法みたいなものなのかな?


「それで、その珍者ちんしゃの特殊能力って、なんなんだ?」


「それも、もう少し大きくなったら教えようピピョーン」


「分かったよ」


 飲食の妨害か。


 珍者ちんしゃには、変な能力があるんだな。

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