禁断の関係?
愛好は駅の広場で柱に寄りかかり、萌園アリスが来るのを待っていた。
しかしいくら待ってもアリスがやってこない。
「あれ? アリスちゃん、遅いわね……」
スマホを取り出し、画面に表示された時間を見て首を傾げる愛好。
「ちゃんと待ち合わせ場所も送ってるし、迷ってるとかじゃないと思うんだけど……」
アリスは時間にルーズではない。
放課後ライブの中には時間にルーズな人物も何人かいるが、アリスはかなり時間に関してキッチリしている方だ。
待ち合わせをしてたら大抵五分前には現れるし、遅れる時も必ず連絡を入れてくる。
だから今の連絡もなしに遅れている、という状況は滅多にないことだった。
「着替えに手間取ってるのかな?」
愛好はスマホをしまい、アリスを探しに行った。
まずは駅の多目的トイレの方へと向かう。
「確か、多目的トイレで着替えてるって言ってたわよね……」
そして多目的トイレの前にやってくると……何やら騒がしい。
『何あれ、痴話喧嘩?』
『男の取り合いとかかな』
多目的トイレの前で騒ぎが起こっているようで、通りを歩く人はチラチラと視線を送っている。
ちらほら人だかりすらできている。
愛好がそちらへと向かってみると。
「な……っ!?」
愛好は目を見開いた。
なぜならそこには、女装し萌園アリスの格好になった理太郎の上に馬乗りになった理奈がいたからだ。
「ちょ、ちょっと待って! 話を聞いて!」
「絶対に許さないんだから……!」
理奈はアリスにスタンガンを押し付けようとして、理太郎はそれを必死に腕で押さえていた。
「ちょ、ちょっと! 何やってんの!?」
愛好は慌てて理奈と理太郎の元へと駆け寄っていく。
「あ、愛好。ちょうど良かった、助けて……」
「止めないで愛好! 私たちは騙されてたのよ!」
「だ、騙されてた……?」
一瞬理太郎の女装をしていた件だろうか、と愛好は考えたがそんなはずはない。
なぜなら理奈にとって理太郎の女装姿は大好物。
もし女装していたことを知ったら騙されていたどころか、大歓喜するはずなのだから。
「コイツ、私たちに黙って浮気してたのよ……!! 二股してたの!!」
「二股……!?」
愛好は理奈の言葉について考える。
──騙されてた。二股。私たち。
愛好は目を見開き、そしてハッと気がついた。
(まさか、理奈と理太郎……そういう関係だったの!?)
愛好は勘違いをした。
(嘘、姉弟なのにそんな禁断の……でも、そういうことなら理奈がこれだけ怒ってるのも納得できる)
愛好はどこか恐れを含んだ目で理奈と理太郎を見る。
そして同時に、理太郎に浮気をされていたと知って愛好の心の中に浮かんだのは……怒りと悲しみだった。
「愛好助けてくれ!」
「アンタ、サイテー!」
「えぇ!?」
愛好は理太郎を罵倒した。
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