お姉ちゃんの心配
【理奈視点】
「おかしいわね……理太郎のパンツが一枚足りない」
深夜。
暗い部屋の中、理太郎の部屋に侵入していた理奈は眉を顰めてそう呟いた。
視線の先にあるのは理太郎の衣類が詰め込まれた棚。
その中の下着の入った引き出しだ。
理奈は引き出しを開けて、首を傾げていた。
なぜ理奈が理太郎の下着の数を覚えているのかというと、理由は単純。
たまに理奈が理太郎の服を拝借しているため、万が一にも理太郎にバレないように全ての服の数を確認しているのだ。
今日もこうして服を拝借しに来たわけだが、弟の下着が一枚足りないことに気がついたのだ。
理太郎は今はベッドでぐっすり眠っているので起きる心配はない。
昔から眠りは深い方なのだ。
「どこかに無くしたのかしら……? いえ、私は全部今まで返しているし……。ならどうして?」
理奈は目を閉じて考えて、ハッとある可能性に思い至った。
「まさか……彼女!?」
あり得る。
弟は自分に似てとんでもないイケメン(※主観)だ。
悪い女に騙されてパンツを剥ぎ取られた可能性は……十分ある!!
そういえば、今日家に帰ってきた時もどこか下半身を頼りなさそうに抑えてソワソワしていた。
でも、最近の無理やりソロ配信をさせて、視聴者に紛れて配信させた時は「彼女はいない」と答えていた。
弟はああいう企画はやらせなしの方が面白い派なので、嘘をつくとも思えない。
となると、残る可能性は……。
「悪い女が理太郎をたぶらかしてる……!!」
ギリ、と理奈は歯を食いしばる。
「私の弟をたぶらかすなんて、いい度胸じゃない……!」
理奈は親指の爪を噛みながら、ここにはいない空想上の悪女を睨みつけた。
「待ってなさい! 私が天罰を下してやるんだから……っ!」
理奈は拳を握りしめ、そう決意した。
「……ん? 姉貴? なんでこんなところに?」
「ひょえっ!?」
その時、理太郎がベッドから起き上がってきた。
絶対に起きないと思っていた理太郎が起き上がったことにより、理奈は奇声をあげる。
「あ、ああ、あのね? これは違うのよ。そう、ちょっと様子を見にきたの。それだけよ」
理奈は分かりやすく動揺しながら理太郎に言い訳をした。
「そうなんだ……」
「ほっ……」
客観的に見ればどう見ても不審だったが、寝ぼけている理太郎は理奈の言葉を信じた。
「でもなんで様子……?」
首を傾げる理太郎。
まずい。理太郎が疑問を持ち始めた。
早く寝かさないと。
(ええと、理太郎を寝かしつける方法は……)
「な、なんでもないのよ。ほら、寝なさい……」
理奈は理太郎の頭を撫でる。
「ぐぅ……」
するとすぐに理太郎は眠りに落ちた。
ほっ、と理奈は安堵の息を吐く。
理太郎の癖が残っていて本当に良かった。
小さい頃から理奈が理太郎を寝かしつけていたので、理奈が頭を撫でるとすぐに眠りに落ちる癖があるのだ。
理奈は今度こそ理太郎を起こさないようにそーっと部屋から出る。
「待ってなさい! 絶対に私が天罰を下してやるんだから……!」
そして理奈は決意を新たにした。
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